高齢化社会の現実

 とある日中、とても久しぶりに横浜市営バスを利用しました。

 席はいくつか空いていましたが立っていると、次の停留所から高齢者が数人乗ってきました。何人かがシルバーシートに着席したのですが、座らない男性の高齢者がいます。「空いているのだから座ればいいのに、立っていられると場所を塞ぐし…足腰を鍛えるために立っているのかな…」などと思っている間にバスは次の停留所に。

 すると、次々に乗車してくる高齢者の人たち。シルバーシートに座らず立っている高齢男性よりさらに高齢な方々ばかりです。「あ、そうなのか」と納得しました。その男性は次の停留所で自分よりもっとシルバーシートが必要な人が乗車してくることを知っていて、あえて座らなかったのでしょう。

 シルバーシートはすぐに埋まってしまったのですが、本来シルバーシートに座るべき年齢の方々が多数立ったままです。でも誰かが席を譲ろうにも、通常のシートに座っている人もほとんど高齢者なので、譲りようがないという感じです。

 立っている高齢者の中に、歩行補助カートを押している方がいて、揺れる車内でバランスをとるのに苦労しています。すると、見かねた感じで「こちらにどうぞ」と席を譲る方がいました。立ち上がったその方も白髪で高齢者です。自分のほうが多少は元気だからと思ったのでしょう。

 寝たふりをして座ったままの若者がいるわけではありません。誰もが、できれば席を譲ってあげたいと思っているようなのですが、皆が高齢者ですから自分もしんどいのです。意を決した人が自分の体に鞭打ってより弱い人を助けるしかない、という状況。「ああ、これが高齢化社会の現実か…」と思いました。

 横浜市では70歳以上になると乗り合いバスと地下鉄が利用できる通称「敬老パス」が貰えます。バスに乗車してきた高齢者もみなさん、それを利用していました。よい制度だと思います。しかしそれにしても、もう少しバスを増便して、高齢者がゆとりを持って乗車できるようにできないのでしょうか?それとも高齢者限定で主要駅まで往復するような特別便のようなサービスはできないのでしょうか?

 高齢者同士で席を譲り合うような辛い思いをしなければならないのでは、通院など不可欠なこと以外に外出しようなどと思わなくなってしまうでしょうに…。