アジアカップ-2

 日本vsイラン、単純にイランの方が強かった、文句なしで。

 延長120分を戦った後、中二日だというのに恐るべき体力と気力のイラン。さすがに後半は息切れするだろうと見ていましたが、とんでもない、後半のほうが日本を上回っていました。「切り札」と目されていた交代出場の三笘も、結局、一度たりとも突破ができませんでした。

 イランと日本の差はただひとつ。エースストライカー、アズムンがいるかいないかです。この選手はすごい。背後からDFに迫られても前後を挟まれても、とにかく何とかしてしまう。しかも片時たりともゴールを狙う意識を途切れされることがありません。フリーになれば絶対にゴール枠は外さないし、かなり無理な体勢でもゴールに向かって相手の脅威となるプレーをする。加えて同点ゴールのお膳立てのような、計算しつくされた繊維なパスを送ることもできる。

 「この選手注意」と警戒されていても90分間、ずっと相手に脅威を与え続け、ワンチャンスでもあれば必ず決定的な仕事をしてしまう。まさにストライカー。かつてアジア最高のストライカー(と私は思っています)だった同国代表のアリ・ダエイの再来ですね。「ダエイに注意、ダエイに注意」とわかっていても、それでも必ず点を取ってしまう選手でした。

 かつてのダエイ、今のアズムンのように「フリーにすれば絶対」「多少マークされていても打ち破ってくれる」という前線の選手がいないと勝てません。今回のイラン、何も小難しい戦術などありませんでした、単純にアズムンの周囲にボールを送るだけ。それでも日本は十分に苦しみましたね。「蹴ってくるだけ」とバカにすることなんてできないですよね。

 上田綺世選手、健闘していたと思います。しかし、体を張ってボールを収めた後、フォローして突破にかかれる選手がいない。久保選手がいる間は、彼がかなり難しい状況でもボールを失わず、相手のいやがるところに侵入していたので可能性は感じていました。しかし久保選手が交代したら、誰も何も可能性のあるプレーを創り出せなかったですね。残った選手は誰も一人では前を向けない。これでは突破など無理。

 PKを与えた板倉選手らDFの不出来を避難する声もあるでしょうが、それ以上に攻撃陣の不甲斐なさが指摘されるべきでしょう。DF陣がビルドアップしようとしても、出すところがない、みな棒立ち。ではそこでいいのかとパスを送れば素早く詰められてロストする。ロストしなくてもバックパスが関の山。バックパス、バックパスでどんどん押し返され、結局、またピンチにらなる。迫力も何もないチキンなアタッカーたちに対峙するイラン守備陣は、心理的にも優位にたっていたでしょうね。

 日本にはどうしてダエイやアズムンのようなストライカーが生まれないのでしょう。もう釜本さんは「神話」の領域になってしまいました。