「密」を避けるとは?

 先日、とある県営スポーツ施設で子どもたちの練習試合を行いました。使用時間は炎天下の11:00~13:00。人工芝のグラウンドは強烈な日差しに照りつけられ地表温度は軽く40度超えています。その施設は地形的に谷底に位置するため、風通しが極めて悪く、熱気がこもっています。熱中症への対策を万全にせねば、とコーチ間で話し合っていました。

 いつもなら利用者が三々五々入れる広い入口の門が、その日は堅く施錠されています。なぜか???管理室に問い合わせると、使用直前まで開門しないとのこと。多分、コロナ対策ということなのでしょう。けれども、それにどんな効果が...???施錠されているために、開門を待つ4チームの子どもたちとその父兄が入口前に大勢集まっていて、いわゆる「密」の状態が作られています。開門まで「密の状態で待て」ということでしょうか?

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 いよいよ入場時間になりました。係員は「入口はこっち」と脇の狭い入口を示します。その狭い入口を目指して4チームの子ども、父兄がどっと移動します。とても「密」な状態です。そして狭い入口に全員が殺到します、ここでもとても「密」な状態がつくられます。いつもの広い門を開放してくれれば、こんな「密」は絶対につくられないのに....???

 さらに驚くことが。管理者は「屋根があるスタンドには座らないで、人工芝のグラウンド上に座れ」というのです。長時間座っていたら低温やけどになってしまうであろうほど熱せられている人工芝の上に...!!!。多分、スタンドに座ると「密」がつくられるということなのでしょう。それにしても、炎天下、真上から太陽の日差しを受ける推定地表温度45~50度の場所に2時間座れ、という感性はどんなものなのでしょう?

 ふざけるな!!!と厳重に抗議しました。

 この炎天下、唯一の日陰をなぜ使わせないのだ!!!と。

 施設側は「しぶしぶ」という感じでスタンドへの入口に堅く貼っていたローブを外しました。私は「皆さん、密を避けるために必ず2席空けて座って下さい」とお願いし、全ての子ども、父兄がその「約束」をしっかり守ってくれました。皆が「2席おき」に座ってもスタンドにはまだ空いた席が十分ありました。

 後日、「先日スタンドを解放したことは特例です。次回からこの場所で日差しを避けて下さい」という「通達」がありました。この場所とは施設横にある木陰なのですが、スタンドでは「密」が生じるが、その木陰では「密」は生じない、という論理なのでしょうか?限られた木陰のスペースに4チームの関係者が殺到したら「密」は必然で、かえって危険です。

 いうまでもなく「密」をつくるかどうかは、場所の問題ではなく、その場にいる人の心がけ次第です。場所にかかわりなく、各自が「密を避けた行動をする」ことが全てです。施設側が利用者の「密」に関する良識が信じられないというなら、係員が常時確認に来て「密」になりそうな状態が見られたら「もう少し離れてください」とお願いすればいいだけのことです。

 「密」の回避を理由に炎天下でも屋根のあるスタンドを立ち入り禁止にしているのは、利用者の良識を全面否定する極めて高慢な姿勢です。「見回りが面倒だから禁止にしてしまえばいい」という怠慢な職務態度の表出です。彼らが次回から木陰の利用を促したのは、そこが「施設外」の場所で責任回避できるからでしょうか?

 よくある話なのですが、結局、守りたいのは子どもでも利用者でもなく「自分」なのですね。

 時間が来て、子どもも父兄も再び狭い出口に殺到し「密」な状態を保ったまま退出したのでした。