装置導入が解決策ではない

 幼稚園バスに子どもが置き去りにされ亡くなった事件は、被害にあった子どもと同年代の子を持つ親たちに大きな不安を広げました。「まさかとは思うけど、我が子の通う幼稚園、保育園は大丈夫だろうか?」当然の心配がよぎります。

 出欠席のアプリを使用しているが機能活用していない、本人不在と気づいているのに「多分、休みなんじゃない?」と確認しない、そもそも出席人数確認の作業が適当、そしてバス乗降車時の点検ルーティンが無きに等しく、チェック機能が働いていない、運転者も添乗者も忘れ物確認すらしないで車を離れる…。子どもを預かる仕事をしているあらゆる組織、団体で、これだけ多くの「適当、いいかげん」を平気で羅列しているところは、ほとんどないと思います。

 事故を起こした園のずさんさはかなり特殊ではありますが、それでも親たちと、幼稚園、保育園関係者の間で「明日は我が身」の不安が大きくなっています。そして「人的ミスは必ず起きる」という前提から、さまざまな「置き去り防止策」が取り沙汰されています。後部座席まで行ってボタンを押さねばエンジンが切れない仕組み、センサーで社内に取り残された子を感知する仕組み…。また、万一取り残された場合に異常を周囲に知らせるために子ども自身がクラクションを鳴らす練習などなど。

 それらは「万一に備える」という意味では一定の効果があるかもしれません。ですが、そのように「装置」によるチェックが増えれば増えるほど、人間が自ら目で見て触って確かめるという意識が薄らぐという危険があると思います。ブザーが鳴らなかったから大丈夫、ランプが点かなかったから大丈夫…などなど。そもそも電源の入れ忘れ、電池切れに気づかなかった、などということもあるかもしれません。

 なので、やはり「人の目」でしっかり確かめることしか防止法はないと思います。出欠確認、本人確認点呼、人数把握などは、「ミスが起きうる」というほど複雑で手のかかる作業ではありません。そして、少しでも不安要素があれば、やり直し、再確認をすればいいことです。

 現場の人員不足、先生の業務多忙なども言われていますが、だからといって人数や本人の所在を確認しないまま見切り発車で強行すべき活動など一つも存在しません。仮に安全確認のために時間が取られて一つの行事が流れてしまったとしても、それで命を救えるなら何でもないことです。

 装置を設置したから一安心、クラクション練習しているから一安心、そういう心理こそ危ないのではないでしょうか。「自分の目で確認するまでは絶対にだめ」という意識を徹底することが最良の予防策です。