W杯-5

 ドイツ戦に続いて歴史的勝利です。

 チーム全体の守護意識が高い集中力で統一されていたこと、そして、相手陣内で「いい形」でボール奪取したときにスイッチオンされる攻撃を支えた大胆なチャレンジ精神が勝因です。中でも、前田、伊藤、三苫の三選手の貢献度はとてつもなく大きいと思います。

 まず前田選手。FWです、しかもセンターフォワード。シュートして点を取ってナンボのポジション。しかしこの試合の彼は、いわば最前線のDF。ひたすらスペイン保持のボールをおいかけ、プレスをかけることに尽力しました。普通、あんなことしていたら「オレ何のための選手なの?」ってなりますよ。「相手のボール追いかけにカタールまで来てんじゃないよ」と。

 しかし、そんな文句は一言もいわず、センターフォワードとして一番格好悪いプレー、すなわち相手に回されるボールを前線で追いかけることに終始した。しかし、その泥臭く地道なプレーが堂安選手の同点弾につながりました。「自分のできること」で最大限チームに貢献した好例です。

 次に伊藤選手。「稲妻ジュンヤ」などと称され、相手守備陣をドリブル突破することが持ち味のアタッカー。彼も「攻めてナンボ」の選手。その彼がまぁよく守備をした。攻めに関わった回数と守備に関わった回数を数えれば、間違いなく守備の回数が多かったはず。自分の持ち味を封印してでもチームコンセプトに忠実なプレーを遂行しました。堂安選手の得点も、最後に伊藤選手が身体を張って競ったボールから生まれています。

 さらに、富安選手が投入されてからは普段あまりやっていなてインサイドフォワードのような位置に移動し、それまで以上に快足が活かせない状況に。しかしここでもしっかり守備していました。彼も前田選手同様、これまでの活躍を思えば「オレの仕事は守備じゃない」と言ってもいいような立ち位置。シュートもほとんど打たず、クロスもほとんど送れませんでしたが、立派にチームに貢献しました。

 そして三苫選手。彼も伊藤選手同様、サイドから相手DFを切り裂くプレーに期待がかかっていましたが、高い守備意識を見せてくれました。時には相手のサイドアタッカーと競り合って自陣ゴールライン付近まで戻って守備。左サイドで何度もスペインの攻撃を封じる姿がありました。堂安選手の同点ゴールは、彼の的確な「読み」と「ポジョニング」そしてスピーディーで激しい「チェイス」から始まっています。

 そして決勝点。身体を投げ出して「最後の1mm」に賭けたプレーが素晴らしい。このプレーがどれだけ少年たちに「サッカーの原点」を示してくれたことでしょう。これからしばらくは「三苫のプレーみたでしょ」と言えば、有無を言わさない説得ができますね。三苫選手すばらしい「手本」をありがとう。

 

守備的サッカーは日本の未来につながらない?

 

 さて、今回日本がW杯で成し遂げた二つの快挙はいずれも守備をかためてカウンターを狙う、という戦術のたまもの。

 以前、こういう戦術に対して異常にまでに否定する人たちがいました。曰く、守備的なサッカーは「つまらない」。曰く、守り続けて勝つような試合をするくらいなら、リスク覚悟で攻めに出て華々しく散るほうがいい。曰く、守備的なサッカーをしても日本サッカー界の将来に何も残らない。

 こんなことを声高に叫んでいた人たちいましたね。しっかり名前を覚えていますよ、ここに列記しましょうか(笑)。彼らにぜひ、またご登場いただいて、守備的な戦術に関してご高説を賜ろうではありませんか(笑)。

 日本のポゼッショ率1割台かせいぜい2割だったドイツ戦、スペイン戦、やはり「つまらなかった」ですか? こんなサッカーしてベスト16入るくらいなら、3-4みたいな派手な打ち合いをしてグループリーグ敗退した方が良かったですか? 相手によっては守備をかためてカウンターを繰り出すという戦術オプションを身につけたことが、日本のサッカー界の将来に何も残さないと思いますか?

 サッカーにはいろいろな「引き出し」があって、それを状況に応じて使い分ける面白さがあるということを本物のサッカーファンなら知っています。サッカーマンガみたいに派手な得点の奪い合いだけを望んでいるなんて、サッカー後進国の子どもだけ(笑)。今回の二つの快挙を機に、そんな「子ども視点のジャーナリスト」たちが自分の主張の幼稚さを自覚して引退してくれた方が、それこそ日本サッカーの将来のためになるでしょう。