W杯-4

  大勝した後に緩んだ試合をしがちなこと、大敗している相手に楽勝ムードで向かいがちなこと、古今東西レベルに関係なく世界中で何十万回も繰り返されてきた「あるある」を大事な舞台で見事にやってしまいましたね。

 失点場面は特にその「意識」の部分が示されました。ドイツ、スペイン相手なら「安全第一」でシンプルに蹴り出していたところ。「コスタリカだから」という意識が「翻弄してつなげるだろう」という形の選択となり、そこを乾坤一擲に賭けた相手に拾われました。

 そうしたメンタル的な要素はともかく、個々の選手のレベルでも日本が期待していたほど「上手くない」ことも露呈してしまいました。ボール際の取り合いはほとんど負けでファウルばかり。狙いだった「いい形で取る」ことはあまりできいていませんでした。アタッカーも、ここぞという場面の1対1で対面する相手を有効な形でかわせたのは三苫選手の数回だけ。これではガッチリ守備を固めた相手を崩すことはできません。

 私が指導している成人チームでこのような展開になった時に出す指示は「同じテンポのパスワークだけでなく、ワンタッチを絡めてリズムの変化を出す。パスでレシーバーを走らせるプレーだけでなく、パスを出した選手がワンタッチのリターンを受けて追い越すプレーを使う」。森保監督も同じような指示を出していたようです。

 そういうプレーはカットされて「入れ違い」になりカウンターを食う可能性がある?確かにそうですが、怖いカウンター要員いましたか相手に?べったり引いてましたよ相手は。

 選手は確かに時折、突破をしかける場面でワンタッチのプレーを使っていましたが、なんだか「とってつけたような」感じで全然タイミング合っていません。「ああ、普段はやっていないんだな」ということが透けて見えてきました。というか、そういうプレーがそもそも体に染み込んでいない感じ。「上手いパス」を「出す」だけで終わっている選手が多い「1億総MF国家」の象徴でしょうか。

 前線の起点作りという点では、私が期待していた上田選手、いまいちでしたね。プレーの雑さばかりが目立ってしまいました。浅野選手も前方にスペースがないと何もできない。今さらですが「これなら大迫選手の方がよかったのに」と思っている人、結構いるのではないですか?

 守り倒してワンチャンスに賭けたコスタリカが見事だったのは、そのワンチャンスのシュートを絶妙なコースに飛ばせたこと。このキックの精度、日本にはなかったですよね。キックのみならず「ここぞ」という場面でのコントロールの精度、特にプレスを受けながらのタッチ、ターンは日本選手、意外なほど下手です。厳しく寄せられて簡単にボール失っている場面多かったですね。

 「圧倒的に攻めたのに」みたいに思われていますが、試合は完全に相手にコントロールされていました。全部コスタリカの狙い通り。思い出したのはその昔、ボクシングヘビー級タイトルマッチでモハメド・アリジョージ・フォアマンを倒した試合。アリは1Rからずっとロープに押し込まれて打たれ続けれたのですが巧みにガートして有効打を許さず、終盤、強打を振り回して消耗したフォアマンの一瞬のスキついて数発の的確なパンチでKOしました。

 「引かれた相手の攻略」に関しては2002日韓大会でトルコに思い知らされたはず。その点に関しては20年たっても進歩はなかったということですね、残念ながら。

 浅野選手、ドイツ戦で一躍ヒーロー扱いされましたが、今度はさっぱり。ホンモノはコンスタントに結果を出してこそ。「やっぱりこの人」とならねばダメ。ジョホールバルの岡野選手も日韓大会ベルギー戦の鈴木選手も、一瞬のヒーローでしたが、残念ながらその後の日本代表救ってくれることはありませんでした。強国との差は、相変わらずストライカーという結論はもう飽きましたよね。