勝負をわけるもの

 イタリア戦、惜敗でした。4-3の激戦でイタリア勝利というと、私のような古いサッカーファンは70年メキシコW杯準決勝を思い出します。あの時の相手はドイツ。イタリア先制で1-0のまま終了と思われたタイムアップ寸前にドイツが同点。延長戦で取りつ取られつを演じて最後にイタリアのリベラが決めて勝利。決勝点はまさに日本が最後に決められたような、サイドからの折り返しに合わせたものでした。
 サッカーは技術、戦術、体力の三つの要素で成り立ちますが、それらを磨いた上で、さらに試合の流れを読み、力を出すポインを押さえるという、「勝負勘」のようなものがとても大切であるということをまざまざまと見せつけられた試合でした。ただ単に「いいプレー」を平均的に90分続けるだけでは勝ち切ることはできないのだと。
 日本の失点は前半終了間際。2-0とリードし、試合の流れも良く「この試合、行けるのでは」というムードが大いに漂っていた時のセットプレー。明らかに油断していましたね。同点にされたオウンゴールも、後半開始早々。安易にゴールキックを得ようとして粘った相手に奪い返されたボールから。そしてその2分後の不運なPKも、長谷部がペナ内でスライディングしなければらない状況を安易につくってしまったから。前半は前からの守備が良く、簡単にはゴール前に進出させなかったのに、特に疲労が出る時間でもない後半開始早々に、気持ちの緩さを見せてしまいました。
 攻めでは日本らしいボール回しが随所に出ていて.....と評価する向きもあるでしょう。
 確かにブラジル戦よりはボール際の球さばきは確実で、相手の寄せ、当たりに対しても、より的確な対処ができていたと思います。しかし、イタリアが守備を固めてきた時には、それを破ることはできなかった。ハンドボールのセットオフェンスのように、イタリア守備網の周囲をぐるぐるとボールが回るだけでした。ここで回せるか、ここで崩せるか、それが最も大事であり、他でどんなにボールが回ってもここで「並み」のプレーになるのでは喜べない。
 日本の得点は、一気に前線に出て岡崎が走り込み得たPK、CK崩れの混戦からの香川ポレー、セットプレーに合わせた岡崎のヘッド、ということで、ポゼッションとはまったく関係ない形の3点でした。W杯でも、五輪でも、結局、日本の得点は、つないで崩して、というプレーとは別のところから生まれていますよね。皮肉なものです。
 慣れない高温多湿でヨヨレヨレ、ヘロヘロになり、さらに2点のビハインドを許し、地元ファンの贔屓を日本にもっていかれたイタリア。そこから勝ちをもぎ取りに行く勝負魂には敬服しました。日本の気持ちの緩みとゲームの流れを見事に見抜き、ピンポイントで得点に集中して4点を挙げました。イタリアの見せた「勝負の分かれ目を見抜く力」これが今の日本に最も足りないものだと思います。