W杯-1

 W杯始まりました。

 開幕試合のカタールvsエクアドル。石油など天然資源のマネーを武器にあらゆることをカネの力で何とかしようとするカタール。全国民が「カネ持ち」ということらしく、スポーツのような肉体労働は外国からの移民にやらせて、自分の息子には大金を注ぎ込んで勉強させ、海外留学でエリートにするというお国柄なのだとか。

 天文学的な資金を注ぎ込んで近代的なスタジアムを用意し、これまた資金を潤沢に注ぎ込んで一度もW杯経験のない代表チームを強化してきたわけです。その結果があの有様。国家予算や国民所得でははるかに低レベルなエクアドルにピッチ上では翻弄されて負けました。

 カタールがどんなにカネをつぎ込んで付け焼き刃の強化をしようとも、長年、ブラジルやアルゼンチン、ウルグァイなど強国の後塵を拝しながらもサッカーに対する情熱を国民一人ひとりが綿々と受け継いできているエクアドルには及ばない、ということが示されました。サッカーに賭ける気持ちをナメるなよ、という感じでしょうか。

 「勝てるはず」だったエクアドルに完敗し、史上初の開催国初戦敗退という汚名を着せられて、カタール人のサッカー熱も期待したほど上がらないことでしょう。おカネで「気持ち」は買えませんからね。

 強靭なフィジカルで果敢に前線からプレスをかけてくるイランの突進を、GKも含めたDFラインが巧みなポジショニングとパスワークでいなし、機を見てタテに鋭いフィードを入れ、それをMFが巧妙なターンでマークを外しながら受けてつなぎ、最後はFWが果敢な個人突破も含めたプレーでフィニッシュまで至る。イングランドのこうした展開を見ていて、今さらながら「プレミアリーグの導入の効果」を実感しました。

 90年代までは、イングランドがこのように「巧みなサッカー」をすることは想像できませんでした。保守的なお国柄。男らしく勇猛果敢なプレーで「力づく」で得点をもぎ取るというスピリットが重視され、シンプル、スーディー、バワフルが持ち味でした。

 92年にプレミアリーグが立ち上げられ、海外から優れた選手や指導者が流入して、イングランドのサッカーも様変わりしました。選手育成も計画的に行われるようになり、伝統に固執するのではなく、世界の最先端のトレンドを重視する姿勢を打ち出しました。この成果が今回の代表チームによく示されていると思います。

 しかし、ただ「昔より上手くなった」だけではなく、イングランドスピットの素晴らしさは残っています。激しい接触プレーがあっても、ファウルをアピールして倒れるのではなく、ガッチリと受け止めて跳ね返そうとする。良いプレーをするために身を挺するということに一つの躊躇もない。エース、ケインも随分と激しくマークされていましたが、決して負けずにボールを保持し、味方の好プレーを引き出していました。

 上手いけど、いざというときにはフェアな強さもある。プレミア導入から30年を経て、イングランドは本当に素敵なチームになったな、と思いました。