W杯-8

 イングランド不運でした。

 最初の失点シーン、シュートを打たれることを察知してしっかり体を寄せてブロックの体制に入っていました。十分にシュートコースは塞げていました。しかしボールは股間を通ってゴールへ。しかも「鮮やかに抜けた」というものでもなく、あと10cmくらいずれていれば体のどこかに当たっていたのに、という感じ。

 決勝点となったフランス・ジルーのヘッドの場面も、CBマグワイヤがしっかり競って懸命に頭を突き出していました。なのでジルーにヘッドされたボールは競っているマグワイヤの肩に当たってわずかにディフレクトしています。そのディフレクションゆえにGKピックフォードのタイミングがずれたように見えました。 

 タラレバを言ってもしょうがないのですが、いっそマグワイヤが競り負けてヘッドがドンピシャでゴールに向かっていればピックフォードに弾かれたかもしれないのに...と思いました。

 2つのPKはしっかり攻め込んだ場面で獲得したもの。そのまま反則がなければ得点になっていたかもしれません。特に2点目は反則で逃げられたという印象です。ケインが失敗してしまったわけですから、フランスにしてみれば「しめしめ」という感じでしょうか。何だかスアレスが決定機をハンドで逃げてPKになったものの、ガーナのギャンが外してしまいウルグァイが反則得になった2010南アフリカ大会の試合を思い出しました。

 ケインほど冷静で正確なキックを持つ選手でも外してしまうのですね。今大会通算3回目のPK、しかも相手GKはスパーズのチームメイトとなると、どこに蹴るかはほぼ予測されてしまうかもしれません。だからでしょうか、「いつものコース」に蹴りましたが、少し力んだのかボールは枠を外れてしまいました。

 フランス確かに強いです。私の大会前の優勝予想国。しかしイングランド、こういう負け方は悔しいですね。2失点の場面もPKの失敗も運が悪かったとしか言いようがない気がします。

 驚異のジャンブ力でした。

 クロスバーが2.44mですが、頭はそれをはるかに超えていましたね。バスケットゴールに届くらいの高さだったとか。とてつもない身体能力。90年イタリア大会、超人的なジャンプヘッドでアルゼンチンを破ったカメルーンのオマン・ビイク以来の驚きでした。

 体格が良く、身体能力も高い選手がしっかりと堅守速攻の戦術を理解してチームプレーに徹しています。強いはずです。

 しかしプレーの局面をよく見ると技術レベルも相当高い。相手に囲まれ、スペースを消された場面で、「そこに出したらだめでしょ!!」というムリムリのパス、サッカー界で言うところの「鬼パス」を平気で出してしまうのですが、スピーディーかつ繊細なタッチと連携でスルスルと打開してしまう。「お見事!!」と拍手したくなるようなプレーが随所にありました。

 技術よし、戦術よし、体力よし。サッカーの三大要素がハイレベルで揃っているのですから、勝ち進むのも納得という感じです。もしかしたらフランス撃破もあり得ますね。

 もともと北アフリカのチームはテクニックとスピードに長けた好チームが多く、一つのスタイルを持っていました。アルジェリアチュニジア、モロッコ、エジプト...。アフリカというよりもアラブ圏という感じ。欧州、南米ではないスタイルがW杯を席巻するのもいいと思います。

 決勝がクロアチアvsモロッコになれば、サッカー界も新時代の幕開けになるでしょう。