FAカップのアプセットに思う

 新たに解説のお仕事をいただいている配信型放送「DAZN」でイングランド伝統のFAカップを担当しましたが、二試合続けて結果はアプセットとなりました。
 28(土)はプレミアの強豪リバールが2部相当「チャンビオンシップリーグ」18位のウォルバーハンプトンにホームスタジアム・アンフィールドで敗退、翌29(日)はやはりプレミアのワトフォードが3部相当「リーグ1」9位のミルウォールに敗退しました。
 リバプールはその前にもリーグカップのホーム&アウェイ二試合でプレミア下位のサウサンプトンにいずれも0-1で敗れていますので(これも解説担当しました)、カップ戦で格下に3連敗という悲惨な状態です。
 リバプールカップ戦3連敗とワトフォードの敗戦はいずれも、ボールポゼッションで圧倒的な優位に立ちながらカウンターに沈んだ試合。どう考えても対戦相手はその戦い方をするしかない...ということがサポーターから選手、監督まで試合に関わる全ての人たちに予測されている中での、まるで示し合わせたかのような点の取られ方での敗戦です。
 「相手の戦い方は最初から100%わかっているはずなのにのになぜ?」とリバプールワトフォードに聞きたい気持ちもあるのですが、私はそれよりも、そのように戦い方が100%予測されていながら、愚直にそれを90分間貫き続けたサウサンプトンウォルバーハンプトンミルウォールの選手たちに賞賛を贈りたいと思います。
 この3チームの選手たちは、攻撃の時、常に「無理かも...」という場面でも敢えて勝負をしかけていました。チャンスは多くないのでその場面が来たら絶対に勝負する、という意識は徹底されていました。日本だったら絶対に「無理」として後方に戻したりヨコバスに逃げたりするであろう場面でも、思い切ってクロスを入れて無理な体勢から必死に競り合っていました。その思い切りのいい攻撃が相手を疲弊させる部分もありました。
 そして、カウンターになって前向きに突進するときの迫力といったらものすごい!!(笑)。DFが2人きても3人きてもガンガン行っちゃう。結局シュートが打てなくてもCKくらいは取っちゃう。最悪でも懸命にキープしてファウルをもらう。このプレーに賭けてるんだ!!という意識がひしひしと伝わります。
 「いいサッカー」とか「未来につながるプレー」とか、日本ではいつまでもよく判らないことが言われていますけど、どうなんでしょうーねー?と思うわけです、こういう「今、自分の力量の範囲できることに全力で徹する」というひたむきな姿を見ていると...。日本では絶対に評価されない戦い方です。
 多分、足下の技術とか、ボール扱いとか、アジリティとかでは、はるかに日本の選手より下手であろう選手たちが、無骨に「自分に出来ること」を100%発揮してその結果、上位のチームを倒しています。
 理想を高く掲げるのもいいのですが、日本が目標とするW杯ベスト8に進出するのに、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、ブラジル、アルゼンチンなどを「自分たちのサッカーで常に主導権を握って打ち破っていく」のは一体いつなんですかね~(笑)。