営業力、実力

 来日中のバリサンジェルマンの「有料」公開練習に1万3000人ほどのファンが集まったとか。練習見たさに4500円も出してJリーグ公式戦よりも多くの観客が集まるというのですからすごいですね。

 ビッグクラブのアジア遠征は、いうまでもなく「チーム強化」というスポーツ的な要素からではなく、「マーケティング」つまり経営戦略のため。商売の場所として「伸びしろ」の少ないヨーロッパよりも、未開拓の余地が大きいアジアで「顔見せ」を行うことで、試合の有料視聴者を増やしグッズ販売の売り上げを伸ばすための「営業」です。

 私の少年時代は、ビッグクラブが来日してもお目当てのスター選手はほんのお愛想くらいしかでなかったり、あるいは明らかに「手抜き」のプレーをしていたものです(ペレはガチで日本代表から2点取ってすごかったですが…)。最近はいいですね。メッシもネイマールもエムパぺも期待を裏切らずにちゃんと試合に出る。もう最初からそういう契約になっている。それくらい日本の「市場」は重視されているのですね。「観光気分」「遊び半分」でやられても日本のチームが勝てないのは昔から同じですが… 。

 一方、欧州の日本人選手はどうでしょう。カズが94年にセリエAに移籍した時からしばらくは、日本人選手の渡欧は明らかに日本企業がチームのゼッケンスポンサーになることとセットでした。カネを出してくれるタニマチと「込み」ということが加入条件で、単純に選手としての実力が見込まれてチーム強化のために「欲しい」と言われるケースはほとんどありませんでした。

 今や、遠藤航(シュトゥットガルト)、富安健洋(アーセナル)、吉田麻也(シャルケ)、鎌田大地(フランクフルト)など、スポンサーの有無に関係なくトップリーグの強豪チームでコンスタントに主軸として活躍する選手が出てきました。日本の有料視聴者を増やすためでもジャパンマネーを引き出すためでもなく、ただ能力を認められて加入を請われる日本人選手が増えてほしいものです。