海外組の代表貢献度は?

 サッカー日本代表がW杯予選で窮地に立たされています。オマーンサウジアラビアに二連敗、結果のみならず、内容もあまり明るい希望が持てないものでした。

 オマーン、サウジアラジアとも、チームとしての統制、連携がよく取れていていました。彼らが代表チームとしてまとまって活動できる時間が十分あるからでしょう。かたや日本代表は、選手の多くがいわゆる「海外組」ということで、選手を揃えてチームとしての連携を整える時間が十分には取れていません。この二試合に関しては、そうした「チームとしの成熟度」の差が浮き彫りになったと思います。

 強豪国の多く、特に南米のチームは、日本と同様、主要な選手は別の国のリーグに所属していることが多く、代表チームとして全員揃ってしっかり強化する、という時間がなかなかとれません。しかしその分、国外のリーグから打表チームに帰ってくる選手たちの個の能力は高く、「そこに出しておけばなんとかなる」という感じで、個人の能力で大事な一仕事をしてくれる、という部分があります。

 さて日本代表、全員でまとまった活動がなかなかできないほど「海外組」は増えました。とはいえ、その多くは強豪チームのレギュラーではありません。現在、海外トップリーグの強豪チームでレギュラーなのは富安、吉田くらいで、あとはトップリーグでも中位以下のチームか、2部リーグ、あるいはオランダ、ベルギーなどセカンドクラスのリーグに所属するチームでプレーしています。

 現在でもなお「日本最強のストライカー」の座を揺るがされることのない釜本邦茂さんが、日本人の海外移籍が増えたことに関して、かつて次のように語っていました。「海外にいくなら、行った先で『助っ人』として大活躍するようでないと何もならん。『勉強させてもらいます、経験になります』なんてスタンスなら、行ったって意味がない」

f:id:johan14:20211009152415j:plain 現在の代表メンバーで、釜本さんの言うように海外チームの所属先で「彼がチームにいなければこまる」というほどの活躍をしているのは富安くらいでしょう。新聞の片隅で出場何分だとか、ベンチに入ったとかの記事が載る程度の選手が多いのではないでしょうか。そのレベルなのですから、代表チームを招集して数日、息を合わせればなんとかなる、というわけには行かないのだと思います。

 「海外」といってもイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス以外はJリーグとさほど変わらないレベルのリーグも多く、むしろ2部ならJリーグのトップクラスの方がレベルが高い、というケースもあります。何でもかんでも海外に行けばレベルの高い経験ができるわけではありません。

 「海外で厳しい環境に身を置く」と言いますが、自分にどれだけ厳しくするかは本人の意識次第です。日本にいても、意識次第で自分に厳しい生活はいくらでもできます、実際、海外に渡らずに優れたパフォーマンスを長期間、続けた遠藤保仁中村憲剛らの選手もいます。環境が厳しくなければどうしても怠けてしまう、というスタンス自体が、既にトッププロとしての姿勢失格なのです。

 私も釜本さんと同様、トップリーグのレギュラークラスに食い込めないなら海外に行く意味はない、と考えます。トップレベルのリーグではなく、また、そこで中心選手にもなっていないのに、地理的、時間的ハンディを負って代表チームの活動を乏しいものにする。そういう選手を代表に選出するのはいかがなものか、と思います。

 本来なら、そのような選手よりもJリーグで大活躍している選手を代表メンバーに選出することが好ましいのでしょう、しかし残念ながら、国内組ではそこまでの選手がいない。日本で優れていると評価される選手は皆、海外にいってしまう。しかし、その「海外組」が海外ではさほど活躍できていない、そんな状況で代表チームは短期間の強化しかできない...それが日本のサッカーの悲しい現実なのでしょう。