祭りの後

 ラグビー日本代表の活躍は低迷していたラグビー人気を再浮上させることに大きく寄与しました。ラグビー教室に通う子どもたちが増えているそうです。多種多様なスポーツが楽しまれるようになることは、大変すばらしいことです。

 ただ、ラグビー界のこの先を思うと、少し心配な部分もあります

 一つは、今回のW杯は地元開催ということで、特別なチーム強化が実施されたという点。年間200日超という異例な長さの強化合宿期間は、間違いなく「今回限り」の特別なケース。各チームから選手をセレクトして大会前に一定期間だけ息を合わせるという、本来の代表チームの形式に戻った時に、どれくらい今回に近い強化ができるのでしょうか? 

 二つ目は、チームの半数が日本以外の7か国ものルーツを持つ選手で構成されていたという点。今回は「現代社会の多様性の象徴」ということで好意的な評価を受けていたようですが、これから先も常に、トンガ、オーストラリア、ニュージーランド南アフリカといった国々から選手を招聘し続けていくのかどうか? また、そうした「選手輸入」のシステムが、W杯が日本開催でないケースでも安定的に続くのかどうか?

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 三つ目は、仮に二つ目の懸念が払拭されたとして、国外ルーツの選手が「日本ラグビー」を支えているという状態になった時、あまり好きな表現ではありませんが「純粋日本人」のラガーが育つ余地が閉ざされていく恐れはないのでしょうか?

 サッカー界ではほとんどの国のリーグで、海外から移籍してくる選手に対する「出場枠」が設けられています。優秀だからといって海外出身の選手ばかりを並べて戦っていると、リーグそのものは面白くなったとしても、国内の選手が育っていく余地が奪われ、ナショナルチームの弱体化に繋がると恐れられているからです。

 さらには、今回はインタビューに通訳が必要な、つまり日本語で十分にコミニケーションできない「日本代表」選手がいました。日本語が話せない日本代表が増えた場合、ファン心理はどうなのでしょうか? 日本代表のジャージを着て勝たせてくれれば、そういうことは一切、不問なのでしょうか?

 四つ目は、やはりフィジカルが強くないと話にならないスポーツということです。スタンドオフやウイングなど、大男でなくても活躍できるポジションはあるものの、体格、筋力がかなり重要な要素となるコンタクトスポーツ。サッカーなどは早々に「フィジカルでは世界では勝負できない」と諦めている中、ラグビー界はその点をとのように解決していくのでしょうか?

 とはいえ、日本のラグビー復興に今回以上のチャンスは二度とないでしょう。それをどう活かすか、日本ラグビーの関わる人々の責任は重大です。