困った"my正論"の振りかざし

 先日、人気の讃岐うどん店に入った時のこと。

 私の後ろに若い夫婦と幼稚園年長くらいの女の子か並びます。メニューを見渡した後、父親が言います。「あれ、ここ"小"がないじゃん。"大"はあるのに"小"がないじゃん。なんで? これじゃ○○ちゃん(自分の子どものこと)が食べられるやつないじゃん。なんで? なんで"小"がないわけ? 
 ご存知のように、そのチェーン店は客が列を進みながら、うどんやサイドメニューを受け取っていくシステムになっています。調理をしているスタッフさんは列を動く客のすぐそばにいて、麺の量やトッピングの種類を聞き取り、注文の品を渡します。そんな距離感で、その父親は自分の妻に語りかけている形ではあるのですが、明らかにスタッフに聞こえよがしに言い続けます「なんで"小"がないのよ、ここ...」

 たまりかねた妻が「しょうがないでしょ。いいじゃん、安いんだから」となだめます。「じゃあさ。○と○を頼んで、取り分けて食べるしかないか、これじゃな...」と、まるでメニューに不備があるから自分たちが我慢するしかない、とでもいいだけな様子。お店に対する非難のニュアンス丸出しの口調です。

 最近、こういうタイプの人、増えましたね。自分が自分の基準の中で「正しい」側にいると思い込んでいて、その自分の基準に合わないものは全て「悪」と決めつけ非難する。「だって、本来こうあるべきでしょ」と、無理矢理に一般的な常識めいたものを非難の根拠にしようとする。

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 まぁ、その父親に言わせれば「家族連れが来店する可能性もあるのだから、子どもが"小"を頼むことくらい想定してメニューをつくっておくのが当然でしょ」ということなのでしょうが...。こういう親が、あらゆることにこのスタンスで接していきながら、やがていわゆるモンスター親になっていくのでしょうね。

 学校で子どもの成績が芳しくなければ「教え方が悪い」とか「課題の出し方に問題がある」と言い、子どもの不始末を注意すれば「叱り方が悪い」とか「使う言葉が不適切だ」などと言う。「子どもを扱うプロなのだから、そんなこと完全にできてあたりまえでしょ」などと言う。

 自分が「こうあるべきだ」と思い込んでいる基準に適合しないものは「なっていない」「本来あるべき姿と違う」と憤る。そして、自分は不利益を余儀なくされた被害者なのだと訴える。挙げ句の果てに、自分の基準に合うものを用意しろと要求する。それは(自分の常識からすれば)当たり前のことなのだ」と居丈高になる。

 この手の人は、一生、どこかに自分の理想とする何かがあるはずと信じ、それを求めてずっと「本来こうあるべきですよね....」と文句を言い続ける人生を送るのでしょう。それはそれで哀れな人生なのですが、可哀想なのは子どもです。その子に降りかかるネガティブな現象の全てに関して、「誰かが悪いから、誰かのせいだから」というパターンを親が用意してしまうからです。

 子どもが少しでもストレスを感じることがあれば、家に帰って「パパ..」と訴えれば「それはけしからん」と抗議してくれる。「悪いのはあいつだ」と断じてくれる。これでは困難を乗り越える力、自分を省みる力など育つはずもなく、依存心が強く自立できないひ弱な人間として育つしかなくなります。

 この手の親は、子どもが社会人になって会社の人間関係に悩んだら「一体どういう人事管理をしているんですか」と会社に文句を言いに行くかもしれませんね(笑)。息子が結婚した相手の女性が料理が下手だったら「普通、料理くらいできるのが当たり前でしょ」と相手の家に抗議に行くかもしれませんね(笑)。