医療の逼迫と少年スポーツ

 最初に緊急事態宣言が発出されて以来、1年半くらいがたちます。その間、何度も宣言が延長されたり解除されたりが繰り返されています。今回に関しては、宣言発出後に感染数が増えるという現象も起きています。この1年半の経験から、我々庶民が「ああ、やはり緊急事態宣言は効果があるな」と実感できたことは、残念ながらほとんどありませんでした。

 一方で、病床が足りず、救急搬送の受け入れもままならず、ドクターの十分な処置を受けられずに亡くなる方の悲しい事例が報告され、使命感のみに支えられて疲労困憊しきっている医療従事者の方々の姿が報道されます。それらを見れば、自分の軽はずみな行為が他者の生死に影響する可能性がある、という意識は常に強く持たねばならないと自覚します。

 それでも、例えば飲食店の営業を20時までに制限していることが本当に感染を抑え込むために効果的であるのか、入院もままならず苦しむ感染者の方々の感染が、本当に飲食の場から多く発生しているのか?飲食店関係の方々は疑問に思っていることでしょう。

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 我々スポーツ関係者にも複雑な思いがあります。宣言発出中は、多くのグラウンド利用が禁止されるからです。私たち指導者は、感染拡大抑止の思いを持ち、子どもたちにその指導を徹底する一方で、屋外グラウンドにおける少年スポーツを停止させることに、どれだけの感染防止効果があるのか?という思いも抱きます。

 この1年半、小中学生のスポーツ大会では「無観客」が徹底され、引率した親の応援すらも許されませんでした。健康チェック表、体温記録などを提出したうえで、厳守すべき注意書きだけでA4の紙1~2枚がびっしり埋まるような「約束事」をとりかわし、慎重に運営されてきました。その結果、屋外の少年スポーツの活動がクラスターの原因となったという事例は報告されていません。こうして1年半かけて実証してきた事実があるのですが、「宣言解除まではグラウンド使用停止」という画一的な指示が出てしまいます。

 「人流を抑えることの一環なのだ」といわれれば、しかたがないかもしれません。しかし、子どもをスポーツの活動場所に行かせないとしても、繁華街やショッピングセンターでの休日の子どもづれの人出は「緊急事態」という状況下とは到底思えないほど多く、こうした「密」な場所に親子連れが集まるくらいなら、屋外でスポーツをさせたほうがずっとよい、と思ってしまいます。

 また、先日、久しぶりに行った映画は、ウイークデイの上映で「一席空け」の座り方でしたが、最前列までびっしり埋まっていました。どうやら、人々は実質的に効果のない緊急事態宣言などは右から左に聞き流しつつ、各自で信用できる確実な感染予防対策を講じて、「自衛」の意識で日々を過ごしているという実態がそこにあるように思えます。

 自宅待機を余儀なくされ、訪問医師の酸素吸入を受けつつ入院を待っている方々のレポートなどを見るたびに、感染拡大の恐ろしさを確認します。感染体験者の「死ぬかと思った」という経験談を直接聞き、そんな苦しみは誰にも味合わせてはいけないという思いを強く持ちます。

 しかし、「その「禁止」「停止」「制限」が感染拡大防止、医療崩壊の防止に本当に寄与するのか、と感じる措置があることも事実です。

 少年たちが屋外のグラウンドで1~2時間スポーツすることがどれだけ感染拡大に関係するのか、もう少し冷静に、可能なら科学的に、示してほしいと思います。オリンピックもパラリンピックも強行され、Jリーグもプロ野球も開催されているのですから。