ああ、またしても決定力、勝負強さか...

 日本代表のビッグゲームがあると毎回、思うのは同じこと。
 五輪サッカー準決勝、男子はスペイン・アセンシオの一発に沈みました。彼の左足が非凡であることは世界中、周知の事実。交代でピッチインして以来、虎視眈々とその左足でゴールを狙っていることが伺えました。だから日本選手も彼の「左足を切る」守り方を徹底して対応していました。
 それでもあの瞬間、ゴールを背にしてボールを受けたアセンシオは、細かいワンタッチで素早くターンし、ほんの一瞬、ボールを短く押し出しただけで、スリータッチ目にはゴール左端に一直線に突き刺さるあの性格無比のシュートを繰り出しました。まるで「その一瞬だけを狙っていた。オレはそのためにピッチに投入されたのだ」という台詞がボールに書いてあるかのようなシュートでした。
 結局、サッカーは、あるレベルから上の戦いは、あの一瞬を決められるかどうかの勝負なのです。そういう選手を生み出せるかどうか。

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 チーム全体として、ボールをゴールに向けてどう進めるかは、計画的な強化をすればなんとかなる。細かくつなぐのか、スピーディーに前に進むのか、やり方はいろいろあるものの、それは「シュートを打つ場所」への「道筋」にしか過ぎません。最後の最後、どのように得点を奪うのかは、あのアセンシオのようなプレーができる選手をどれだけ生み出せるか、にかかっているのです。
 思い返せば”その一瞬”に長けた選手に「世界」を思い知らされるというのは今にはじまったことではなく、W杯初出場の 98フランス大会から25年続いている話。あの時、アルゼンチンのバティテステュータ、クロアチアシュケルに、それこそワンチャンスを決められて0-1で負け、パスまわしだけでなくアタッキングサードでの決定的な仕事こそ大事、と岡田武史さんがレポートして以来、事態はほとんど変わってはいません。
 この原稿を書いているのは、まさに3位決定戦が行われる数時間前。グループリーグで日本に苦杯を喫したメキシコは相当、気合を入れて来るでしょうね。少なくともグループリーグの時のようにあっさり2点を献上するような「悪い入り方」はしないでしょう。拮抗することが予想される試合、モノをいうのは決定力であることは間違いない。
 野球は甲斐選手、山田選手の見事な勝負強さで勝ち進んでいます。栗林投手の気迫もすばらしい。三人とも「ここぞ」という時に見事な仕事をしている。素晴らしい。あのように勝負強い選手がサッカー界にもほしいものです。