ああ、バカ父、アホ母

 とある一日。緑豊かな公園を父の車椅子を押しながら散策していると、子どもの泣き声が...。見ると4~5歳の女の子。母親と自転車の練習をしている様子。「怖い」「できない」と泣いています。
 まだ幼いのだから自転車なんか乗れなくてもいいのに...と思ったのですが、母親はどうしても乗れるようになってほしいのか、あれこれと乗り方の指示を出しては「やってみなさい」と半ばキレぎみでまくしたてます。母親の語気が強まれば女の子の泣き声も大きくなるばかり。
 そんなに自転車に乗れることが大事なのか...泣きながらでも練習するようなことなのか...と思いつつその場を離れ、車椅子を押しながら園内の小高い丘の後方に伸びた散策道をのんびりと回り、15分くらいしてからまた元の場所に戻ってくると、女の子はまだ泣いています。今度は母親だけでなく父親も加わって、泣いている子に厳しい言葉を投げつけています。
 「乗りたいって言ったのは・・・(女の子の名前)だろ!!」
 「それなのになんで怖がってばかりなんだ!!」
 「一生懸命教えてるのに、そうやって泣いてばかりじゃ、こっちだって面白くないよ!!」
 いやいはや、「もともと乗りたいと言い出したのはおまえだ」とばかりに我が子の言質を取って責め立て、挙げ句の果てに「こっだって面白くない」などと、楽しい一日が台無しになったのは、おまえが泣いているからだとばかりに我が子を非難する。4~5歳レベルの許容力?
 一方、母親と言えば、まだヨチヨチ歩きの次女とおぼしき子を抱き抱えるようにして自転車に乗せ、ほとんどサドルに座らせているだけの状態なのに「はーい・・・(次女の名前)ちゃんは怖がらないで上手にできるよね~」と、泣いている長女の前で当てつけがましく次女を乗せた自転車を支えながら動かしています。怖がる長女を発憤させるため???それにしも意地の悪いこと極まりない行為。大人げない。言うまでもありませんが、そんなことを見せつけられる長女は泣き続けるばかりです。
 4~5歳の子供が自転車に乗れないことに対して、まるで自己責任を突きつけるような発言をするバカ父。追い打ちをかけるように次女を使って当てつけがましく非難の感情を示すアホ母。こんな両親に育てられたら、子どもがすこやかな精神とともに育つ期待がもてません。きっとあの女の子も、いずれ同じような視点で人を見ていく子になってしまうのでしょうね....。悲しいことです。
 「あのね。おじちゃんだって乗れるようになったのは小学校に入ってからだよ。自転車なんてそのうち乗れるようになるさ。慌てなくてもいいよ。また練習しようね。もし一生、乗れなくたって困ることはないよ、大人になったら車を運転すればいいんだから」と声をかけて慰めてあげたくなりました。
 私が父と公園に来てから立ち去るまで、30分以上、その子は泣き続けていました。本当に心が痛みました。