スポーツの「知の戦い」

 もう正月になってしましたしたが、私が独断で選ぶ2019年のスポーツ大賞を発表します。

 それは北野嘉一選手です!!!。

 ....???えっ、それ誰? ラグビー日本代表やゴルフのシブ子さんじゃないの? ボクシングの井上直弥だってものすごいことしたよ...それよりもすごいアスリートって、一体だれ?

 はい、では北野選手を紹介します。彼は、現役の京都大学の学生で、野球部員、外野手です。京都大が所属する関西学生リーグは、同志社大関学大近畿大など6チームで構成され、京都大は毎年、最下位がほぼ定位置。

 当然ですよね。他大と違って、京都大はスポーツ推薦入学なんてできませんから。まず日本でトップの学力がないと入れる大学ではない。京都大に入れるトップレベルの学力があって、そのうえで野球もトップレベルで上手な人....なんてまぁいるわけがない。

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 ところが今年、京都大は4位に躍進。その立役者の一人とされるのが、打率4割5厘でリーグ首位打者を獲得した北野選手なのです。

 「大賞」を授与したいのは、彼の野球への取り組み方。まず自身の身体の改造。打撃力アップに必要な筋力強化を下半身中心に行い、筋肉で体重を4キロ増量してパワーアップ。そして、対戦相手の投手の動画を撮影し、投球法、球種、配球の傾向、クセ、などを徹底してデータ化して研究しました。

 相手投手のカウントごとの配球は表計算アプリを活用してグラフ化され、どういう場面でどういうボールをどこに投げてくるかが視覚化したデータは、チームメイトに共有情報としてプレゼンされました。通学中の電車内は、こうしたデータを予習、復習する大事な時間だったといいます。

 リーグで対戦する相手投手は皆、高校までに全国的な活躍をしてきた精鋭たち。リチウム電池ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんと同じ公立進学校出身の北野さんが、まともに戦ってかなう相手ではありません。しかし「彼は初球の80%は~を投げる」とか「彼が勝負球として投げてくるのは70%は~」というように、北野さんの頭の中には各投手の投球パターンがしっかりとインプットされていたのです。

 こうした努力が実り、打率4割超えという大活躍になったのです。その打率の中には、プロからドラフト指名を受けた投手から奪った二安打も含まれるとのこと。

 スポーツは、生来の運動能力と体格の差が大きく影響します。速さ、強さ、大きさ、などは、どんなに努力しても絶対に埋められない部分がある。しかし、逆立ちしてもかなわない部分をどんな創意と工夫で埋め合わせていくのか、さらには、どんな戦略、戦術で戦い、攻略していくのか、という「知の戦い」があるから面白い。

 北野選手は、まさにその「知の戦い」の価値を示してくれました。どんなスポーツでも99%の人はプロになれない。しかし、このように「知の戦い」を駆使しながら1%の天才たちに立ち向かっていくのも楽しいですね。

 彼の打撃への取り込みは、まさに科学的、論理的であり、その手法とデータ処理、活用の方法は、今後の研究、ビジネスでも流用されていくことでしょう。スポーツで優れた「知の戦い」ができる人は、結局、どんな分野に行っても「できる人材」として活躍するのです。