人種差別

 11日(土)に行われたプレミアリーグ、マンチェイターU vsリバプールで、残念な出来事がありました。
 試合前、両チームがすれ違いながら握手する場面で、リバプールスアレスマンU・エブラの差し出す手に握手せず、無視して次の選手と握手しようとしました。「おい、ちょっと待てよ」とばかりに手を伸ばして握手しようとするエブラの手を振り切り、スアレスは進んでいきます。
 そのシーンを間近で見ていたエブラのマンUのチームメイト、ファーディナンドは、今度はスアレスが差し出した手を拒否、こうして互いに握手が拒否されるシーンが2回、映し出されたままゲームは開始しました。
 事の発端は両チームが10月に対戦した際、スアレスが試合中にエブラに対して人種差別発言をしたことでした。その懲罰でスアレスは8試合もの出場停止処分を受け、先頃、ピッチに復帰したばかり。そこで再び因縁の対戦となったので、両選手の動向が注目されていました。10月に侮辱的な言葉を7度も連続して浴びせられたという“被害者”のエブラが「水に流そう」と手を差し出したのに“加害者”スアレスの方が握手を拒否したのです。
 逆恨み、とでもいうのでしょうか。自分が発した言葉はラテン社会(スアレスはウルグァイ人)では差別の意味を持たない、というのがスアレスの言い分のようです。しかしそれにしても、面と向かって7度も連続して浴びせるということは、何かしら相手を貶める意志があってのことは明白です。それなのに「8試合もムダにさせやがって」とばかりに“被害者”との握手を拒否するのは、やはり人として間違っていますよね。
 試合は2-1でマンUの勝利。握手拒否に対してよほど「許せない」という気持ちが強かったのでしょう。試合後、エブラは引き上げるスアレスのすぐ脇で、これ見よがしにスタンドに向かってバンザイを連発、ファンもそれに大歓声で応えましたが、今度はスアレス側のリバプールの選手、ファンが「やりすぎだろう」と気色ばむ場面もありました。
 イングランド代表のテリー選手も、やはり人種差別発言が問題視されて代表キャブテンの座を剥奪されたばかり。組織を挙げて「アンチ・レイシズム」を掲げても、なかなか事態は改善しません。人は、なぜ、このように別の人を貶める行動で自分の優位性を保つ心理を抱くのでしょう。大きい、小さい、強い、弱い、多い、少ない...。