本当はそれで十分なのにね....

 指導を担当する小学3年生が地元の大会で大敗続きです。
 幼稚園から叩き上げている他チームと違い、当方は3年生になって初めて勝ち負けで順位を競う大会に参加させます。特に今年の 3年生は春に入部し初めてサッカーを習うという子が多く、右も左も判らない状態だったので、春の大会は一つ下の2年生の助っ人を入れて戦うような状態でした。
 あれから数ヶ月、子どもたちは着実に成長したので、秋の大会は2年生の助っ人なしで臨んでいます。しかし、他チームのとの身体能力と経験の差は歴然。特に4年生相手の時には、まったく手も足も出ません。その結果、過去に例を見ないほどの大敗が続いています。
 個々の成長が実感できているとしても、あれだけ毎回、完膚なきまでに打ちのめされると、サッカーそのものがつまらなくなってしまうのではないか...と心配になります。やはり他チームのように1年生の頃から大会に参加させて「勝ち方」を学ばせた方がよいのだろうか...という気持ちがよぎります。
 しかし、心配は無用でした。
 子どもたちは試合と試合の間の空き時間、誰に指示されるでもなく、自ら練習を始めます。負けたから悔しいとか、できない自分がなさけない、などという悲壮な感じは微塵もなく、仲間を誘い、嬉々として技術練習をしているのです。これには驚きました。
 過去の経験では、試合で成績が振るわない子の場合、何も指示のない自由時間にはサッカー以外の遊びに夢中になってしまい「その元気をサッカーに向けてくれれば...」と嘆かわしく思うことがよくありました。しかしこの子たちは違います。時間があれば自ら誘い合ってサッカーの練習をしているのです。しかも、やっていることは、私が課している課題の練習です(驚)。
 きっとそれぞれが、自分なりに少しずつ上達していることを実感しているのでしょうね。試合では大敗したけれど、個々のプレーの中で、今までできなかったことができるようになった手応えがあるのでしょう。だからこそ、もっとできるように...と自ら進んで練習しているのだと思います。
 そういえば、大会の合間の定期練習などでは、皆、開始時間のかなり前にグラウンドに来るようになり、私が「集合」をかける前に子どもたちどうしてルールを決めてミニゲームなどをしている様子が見られるようになりました。欠席する子も少なくなりました。それまでは週末に参加するだけだったのに、ウイークデイ練習にも参加する子も出てきました。なんだか「やる気」のようなものが出てきているのです。
 考えてみれば、そういう状態が生まれてくれば、3年生、9歳の子どもに対するスポーツ指導はそれで十分なのですね。サッカーを楽しいと思い、もっと練習したいと思い、その中で着実な上達を実感し、指示されなくても自らより難易度の高いことに挑戦するようになる。少し前まで、サッカーのルールさえまともに知らなかった子たちが、いつの間にか仲間と誘い合って試合のまねごとをする中で競い合う楽しさを求めるようになる...。
 サッカーを始めたばかりの9歳の子どもにそれ以上何を要求するというのでしょう...まずはそこまでで十分ではないでしょうか...と私は気づきました。公式戦の大敗には落ち込みますけど(笑)、試合結果だけにとらわれずに、子どもたちの成長を見守っていきたいと思います。