ルールの精神と日本サッカーのアタマの堅さ

 大阪学院大付属高校が大会の開会式に参加しなかったことで棄権扱いになり、全国大会への道を閉ざされたそうです。
 同校は150人近い部員を抱えながら、各校最低7人出席が「義務」の式に誰も行かず、大会本部から確認の電話を受けて慌てて選手を送ったものの「時間切れ」で後の祭りだったとのこと。
 同校の失態を云々を語る前に、まず感じたのは、開会式なるものを試合日とは全く別に別会場で開催し、そこに「最低7人の参加』を義務づけている大阪高体連のお歴々の古式ゆかしき意識の滑稽さです。
 想像するに、「わざわざ開会式だけ半日かけてやるなんて...。大切な練習を休ませてまで部員を主席させるほどの意味があるのか?。誰かが出てればいいんだろう」と、たとえばマネージャーだけが参加するなどの形式的出席が過去にあったのではないでしょうか。そうした状況にオエラ方が憤慨し「大きな会場を埋め尽くす盛大な開会式という体裁が整わねばダメだ」と色めき立ち、「絶対に7人以上参加しろ』という「義務化」が通達されたのではないでしょうか。
 私の若い頃も少年大会の開会式を大きな市営体育館で行う際、「欠席したら出場取り消しにする」という通達を受けたたことがあります。大会場が大勢の参加者で埋まらないとバツが悪かったんでしょうね。当時、私のチームには1、2年生しかおらず、退屈極まりない進行の間、子供たちを大人しくさせていることに苦労したことを覚えています。
 さて、開会式の意義はさておき、同校は150人近い部員がいながら、部長先生、顧問先生、マネージャーを筆頭に、ただの一人も開会式のことに気づかなかったのでしょうか?みんな、片時もスマホを手放さず、ヤフーニュースなどを見ている時代なのに...。一軍が20人として、「その他大勢」が130人もいると、誰が何をやっているのかすらもわからなくなるんでしょうね。
 同校が開会式に誰も来ていないことを確認した上で連絡し、慌てて部員が駆けつけても「遅刻、時間切れ」とバッサリ切って落とす大会役員。「スポーツの大会だからルールはルール」という、どこに出ても胸を張れる大義名分ゆえの行動でしょうね。ワイドショーで不倫をなじるレポーターと同じ。正論、社会正義という後ろ盾がある人間は一番、態度がでかくなる。もしかして、大会失格を告げた人、同校が出場しないと助かると思っているライバル校の関係者??などと勘ぐりたくもなります(笑)。
 同校がもともと「そんなばかばかしい式、出席するつもりはありません」と拒否しているならまだしも、学校挙げてアホで(笑)、すっかり忘れていて、遅れてでもとにかく式に主席する意思があり、実際、式場に駆けつけているのなら、特例として遅刻参加を認めてもいいのではないか、というのが私の考えです。式典に遅刻することが、一つの大会、それも高校生にとって最も大切な大会に出場することを取り消すほどの重大な「罪」だとは到底思えません。中国で麻薬にかかわったら即、死刑になるのと似た感じです。
 大会役員は「一つ例外を認めてしまえば...」と言っているようですが、「あの時、大阪学院大付属が遅刻を認められたんだから、オレたちも堂々と遅刻するぜ」と今後、遅刻、遅刻で開会式が収拾がつかなくなることなんてあり得るんでしょうかね(笑)。
 以前、同じ大会の東京予選で、顧問が選手証を忘れてしまい、慌てて取りに帰ったもののキックオフに間に合わず、失格負けになったチームがありました。もちろん、ルールに沿った処置なのですが、いくらでも救済方法はあったはずです。例えばスタメンの名前を確認しておき、選手証がとどいてからハーフタイムに改めて照合するとか...。選手証は出場している選手が本人であることを確認するためのツールなんですから、その目的が果たされればいいわけでしょ?これも「一つ例外を認めれば...」が大義名分でした。しかしそれを認めたことで「選手証がなくてもいいんだ」とごり押しするチームが多数出て収拾がつかなくなることなんて、現実にはあり得ないわけです。
 スポーツだからルールに厳格というあり方は、ある意味、大切かもしれません。しかし時としてそれは、本質から遠ざかるナンセンスな縛りを生みます。ルールにはそれが制定される背景があります。何を守るため、というルールの精神が存在します。しかしその「ルール成立の精神」を忘れてしまい「守る」こと自体が目的になってしまい、もともとの精神を尊ぶことではなく「守ったこと」そのことに価値を見いだしてしまう人がいるのです。
 こうした、いわゆる「アタマの堅さ』は、日本のサッカーの弱点そのものです。「何のために」であるかはどうでもよく、決めたことを守ること自体が大切であり、それが和であり日本が世界に誇るチームワークであると。そして、その「自分たちのサッカー」で世界に出て「決められたことしか出来ない」「試合運びがつたない」と嘲笑されるのです。