ハリルホジッチ監督も呆然...でしょうね...

 日本代表、まんまとシンガボールの術中にはまりましたね。時にDFラインを高く保って日本のタテへの攻撃をオフサイドで牽制したり、時にDFラインを深く引いて走り込むスペースを消したり。シンガボールの日本対策、バッチリでしたね。自分が指揮するアマチュアチームが格上の強敵と戦う時の参考になりました。 
 ハリルホジッチ体制になって、タテへの意識が植え付けられ、親善試合では、それまでのまったりとした“ポゼッションごっこ”はなくなり、スピーディーな突破が数多く見られるようになりました。だから前回「よくもそれほど変われるものだ」と書きました。
 しかし、勝負のかかった真剣勝負になると話は別なのですね。どれだけ「いいサッカー」を見せたかどうかではなく、最終的にどれだけ勝ち点を積み上げたかが勝負という試合になると、昨日のシンガポールのように「あわよくば引き分け」を狙う試合もアリになる。それをどう崩すかが、サッカーの引き出しの中身の豊富さを問う「応用力」の問題。日本代表の選手たち、物事が習った通りに進むときはめっぽう強いのですが、想定外の事態への応用力が貧弱であること、バレてしまいましたね。
 ポゼションと言われればポゼッッション。タテと言われればタテ。何でも習ったことを出すしかできないのが日本人。監督が代わって前とは違うサッカーができるという期待が膨らみながら、結局、同じ事を繰り返す。根本的なことは何も変わっていません。
 それにしても、日本選手の応用力のつたなさには情けなくなりますね。引かれた相手をどう崩していいかわからずに右往左往する様子は、2002年日韓W杯のトルコ戦と同じ。あれから13年。日本のサツカーは何も進化していないということです。いや「問題はアタッキクングサード(攻撃の3分の1のエリア)でどういうプレーをするかだ」という警告は98年フランス大会後に岡田武史さんが発していますから、17年変わっていないということになりますね。
 こうなったら子どもたちに未来を託すしかない....。いいえ、それは絶対にムリです。断言します。
 月曜は空手、火曜日はバイオリン、水曜日は公文、木曜日は水泳、金曜日は学習塾、土日はサッカー、なんて生活している子は、もうずっぽりと「習い慣れ」してしまっていますかから、逞しい自己探求力なんてゼロ。場合によっては口うるさいパパが、これでもかと我が子に始終教え込むから、そうなればもう探求力なんてかえってマイナス状態。引いた相手をどう攻略するかに対しては「コーチ、そういう時はどうすればいいのですか」と聞いてくるのが関の山。
 何でも教室に通わせて教え込めばいいと考えている親、何でも徹底して覚えさせればいいという親、多いですよね。運動も音楽も勉強も芸術もと...全人的スーパーマンでも育てるのかっていう勢い。しかし、どんなに「栄養があるぞ」といってお腹に詰め込んでも、いつもお腹一杯にしてしまえば食べる喜びを疎くするだけです。そして、本当にお腹がすいて自分で何とかしなければならない時に、「お腹がすいたのですが、どうしたらいいのですか」と教えを請う人間をつくるのです。
 サッカーだけでなく、スポーツ全般、勝負事全般の「かけひき」なんて、十分な時間の中で自由に試行錯誤を繰り返す経験をして「肌感覚」で身についていくもの。マニュアルで教わるものではありません。でも「習い事漬け」の子どもたちを見ていると、きっとそんな感覚、将来はまったく消え失せてゼロになってしまうんじゃないかと怖くなります。日本代表のプレーにはその兆候、少し見て取れます。
 攻めても攻めても入らない。そんな経験、自分のサッカー人生でも初めてだとハリルホジッチ監督は呆然としていました。そうでしょうね。母国、旧ユーゴでも監督として躍進したフランスでも、これほど応用力の乏しい選手たちに出会ったことはないでしょうね。でもねハリルさん、日本人の真面目さって、実はそういう弱点の裏側だったのですよ。あなたが熱く語れば語るほど、選手はその通りにばかりやろうとしてしまうのです。そのように育てられてしまっているのですよ....。