サッカーとはボールをゴールに蹴り込む数を競うスポーツだ

  日本代表がアジア杯でUAEに負けました。35本もシュートを打ってたった1点、しかもGKの好セーブに阻まれたものはほとんどなく、大抵は枠外に飛んだかブロックされたシュート。これでは勝てなくて当然ですね。
 イングランドで行われているFAカップ。こちらもリーグ首位のチェルシー、2位マンチェスターシティ、3位サウザンプトンが相次いで格下チームに敗退する波乱。チェルシーを破ったブラッドフォードはチェルシーから数えて49番も低い順位のチームだったとか...この波乱の3試合、いずれの結果を見ても、シュート数は上位のチームが圧倒していますが、オンターゲット、つまりゴールの枠に飛んだシュートでは下位チームが上。チャンスを確実に活かすか否かの問題。
 奇しくも私が指揮しているチームも昨日、まったく同じ形でみじめな敗戦。しかも、事前に「絶対そうなるから十分に注意」と予告していたのに、まんまと負のスパイラルに突入。チェルシー、マン・シティ、サンザンプトンの選手たちはもろちん、モウリーニョペジェグリーニクーマンといった名監督たちも、そういう可能性は百も承知で試合に望んだはずなのに「よくある」バターンにはまってしまうのですから...サッカーとはそんなもの...と割り切るしかないかもしれません。
 連日、こうした結果をつきつけられ、自身のチームも同じ憂き目にあうと、当たり前のように言われている「主導権を握る」ということがいったいどういうことなのか、考え直さねばならないと感じます。ボールをより多くの時間、保持している、相手陣内により多く攻め入っている、シュートをより多く打っている...という現象があれば、これまでは間違いなく「主導権を握っている」ということになるのでしょうが、日本代表が何度も繰り返しているように、そういうチームがしばしば勝てないわけです。
 つまり「主導権を握っている」ということは、試合に勝つためのいくつかの条件の一つにすぎず、決して決定的なものではない、ということでしょう。ですので「主導権を握っている」イコール「いいサッカーをしいる」という短絡的な価値観にとらわれないことが大切です。ボクシングで毎ラウンド攻勢点を取っていても、ワンバンチで倒されては元も子もないように、試合の結末をつけるプレーができなければ意味がないのです。
 試合の結末をつけるプレーの中でも、やはりシュートは最も大切な技術です。日本ではシュートどころか、キックそのものが下手な選手が多いですね。トリッキーなプレーや曲げるキック、チップキックなどをマスターしようと懸命になっている選手はいても、結局、狙ったところに正確に蹴ることができずに試合ではシュートミスを繰り返す。競り合いながらシューとを打つプレーになると、いとも簡単に体の軸がブレてしまう。
 サッカーとはゴールにボールを蹴りこむスポーツだ、ということを忘れている土壌からは、強いチームは育たないですね。