女子ドイツ代表と港北FC

 女子W杯で、なでしこジャパン、優勝候補の地元ドイツに素晴らしい勝利でした。粘り強い守備と最後まで諦めない集中力はお見事。決勝点の場面、澤選手のワンタッチのパスは見事でしたが、丸山選手の動き出しのは早さも抜群。

丸山選手はずっと控えでしたが、自分の武器であるタテヘのスピードを存分に活かしました。決めたシュートは本当にそのコースだけボール1個分空いていたところへのキック。その一瞬、そのワンタッチで狙ったところに蹴るために、何時間も何ヶ月も何年も、とほうもない時間を練習するのです。その努力を地道にやっている人だけが、あのような場面で報われるのです。
 さて我が港北FCトップチーム。やってしまいましたよ。こちらは、なでしこではなく、ドイツの役回りの方です。
 試合前のミーティングでの私の注意。「今日の試合は君たちが主導権を握る時間が長くなる。だから、それに甘んじる事なく、決定機できちんと決め切ること。イージーなシュートミスを繰り返して、いつでも入るから大丈夫、という気持ちで試合をしていると、カウンター、セットプレー、あるいは自分のつまらないミスで失点する。そうなると相手に、のらりくらりと逃げ切られることになる。そこから慌ててもだめ。絶対にそういう試合運びにならないように」。その後、少し生化学的な見地から決定機での「心構え」の話をし、ピッチに送り出したのでした。
 ああ。私には予言者の才能があるのでしょうか。開始1分でロングシュートがバーを叩き、わずか5分の間にも数回の決定機。しかし入らない。いやな予感。パスワークで完全に相手の守備を翻弄するチャンス、個人のドリブル突破でGKと1対1になるチャンス、サイドを崩してクロスを入れるチャンス、軽く蹴るだけで簡単にゴール内にボールが転がり込むであろうチャンス、そして数え切れないほどのコーナーキックと相手がたまらず反則して受けたペナルティエリア近辺での直接FK.....。攻撃バターンの練習をしているような展開。しかし入らない。入らない。

 カウンターを受けてクリアしそこねたプレーで受けたコーナーキック。攻めた後に受けるセットプレーは、気の緩みからしばしばピンチになると、プレミアリーグの解説でもチームの指導でも口を酸っぱくして言っていましたが、案の定、マークが甘く失点。狂喜乱舞の相手。そうでしょうよ、こんなに効率の良い得点はないですから。
 ハーフタイムでの私の指示。「怖いのはカウンターだけ。だからまず自分たちの攻撃で、きちんと攻め切ること、シュートまで行くこと。それが難しくても、少なくとも相手DFが後ろ向きで処理するようなプレーに持って行くこと。絶対に中途半端な形でボールを奪われないように」
 再び予言者・永井の登場となつてしまいました。1点を入れて追い上げ、さあ、ここから、と意気込んだ矢先、あ~あ、なぜ!!!。私が固く禁じた「つまらない形でカットされる」プレーがでてしまいました。皮肉なことに、疲れて戻り切れていない相手FWに絶好のプレゼントボール。技術も戦術も作戦もなにもなく、ただ立っていたら相手が絶好のボールをくれたのですから、相手は美味しいですよね。
 女子ドイツ代表のように、なでしこの攻撃に「やられた」という形ならまだしも、こちらは、数えるのもいやになるくらいの決定機のミス(20本はあったでしょう)とプレゼントボールでの敗戦。もちろん、言い訳はしません。これも紛れのない実力。日頃、キックやシュートの練習を適当にやっている選手と、それを容認していた私の責任です。狙ったところにまっすぐ蹴らずに、変に曲げたキックやループシュートばかりやってると、こういうことになるのです。