ニッポンを叫ぶ人たち、どこ?

 自称イスラム国、ISILの鬼畜の蛮行に心底、憤っている人は無数にいることでしょう。今後は日本人であれば無差別に誘拐してして殺すと宣言しているのですから、サッカー観戦も含めて、渡航中の行動は慎重を期さねばなりません。
 それにしても、こうした国際的なトラブルが生じて日本人に実害が及ぶ度に、一体アノ人たちはどうしているの? という疑問が生じます。アノ人たちとは、普段からニッボン、ニッボンと連呼し、外国にナメられるな、自力で国を守れ、ガンガン派兵しろ、何かあったら実力行使で目にモノ見せてやれ、と息巻いている人たちです。
 正義とか義勇とか忠信とか愛国とか、何だかもっともらしいスローガン掲げて「オマエラ平和ボケだ、日本民族の心意気を見せてやれ」などと叫び「アメリカにもらった民主主義や押しつけられた憲法九条など廃棄だ、世界に冠たる日本ここにありと見せつけてやれ」と鼻息を荒くしている人たちです。
 相手が中国や韓国の場合は、聞くに絶えない罵り言葉を発して攻撃し、竹島尖閣列島に強行上陸するなどのバフォーマンスをする。あるいは従軍慰安婦を巡る問題発言をしたり在日外国人に対する差別発言をする。そうやって普段は散々、勇ましいこと言って拳を振り上げているくせに、今回のようにリアルに命がかかって切迫した危機になると、どこへいったのかわからないくらいすーっと静かになっちゃう。
 いつものニッポン、ニッボンの勇ましい勢いなら「よし、オレも日本男児の端くれだ。代わりに人質になってやる。それで日本人が救われるなら本望だ」くらい言ってもよさそうなものですがね~。「何ならオレが自爆装置を巻き付けて直接、交渉しにいってもいいぞ。失敗したら命がけでヤツラにも一矢報いてくる。そのくらいの覚悟でなければナメられるのだ」てなこと、本当なら言いそうじゃないですか、その手の人たち。しかしそんな話、ちっとも聞いたことない。
 日米安保条約でいざとなったらアメリカが日本人を守ってくれるんですよ、なんていっていますが、実際には中国船が我が物顔で悪事を働いても、何~んもしてくれていないわけです。テポドン日本海に発射されても何~んも対処してくれないわけです。悪逆非道の組織に日本人がつかまっても何~んもしてくれないわけです。いつか沖縄をはじめ、日本の基地が攻撃対象になったら、アメリカ人が命を賭けて日本人を守るなんてこと、どう考えても絶対にないでしょうね。とっとと本国に逃げるでしょうに。
 ともあれ、今回の悲劇で、イケイケドンドンの交戦派の人たちは「それみたことか」と勢いづき「だからこちらからもガンガン攻めていけるようにしようぜ」「いざとなったら武力行使で人質を取り返そうぜ」と色めき立つのでしょうね。しかし、そういう人たちは絶対に自分では矢面には立たないということが、今回のことでよくわかりましたよね。声がでかくて強面でも、実際に血を流して命を賭ける覚悟なんてないんです。
 夫が残忍な殺され方をしたにもかかわらず、中東の平和を願う大所高所からのメッセージを発した後藤さんの奥様に対して、中東専門家の内藤・同志社大教授が「テロの恐怖に屈せず和平を願った素晴らしい言葉。これでイスラム国は負けました」と一瞬、言葉に詰まりながら評価していました。非常に深い評価だと思いました。