サッカーの「面白いところ」

 私が監督をする港北FCは2月17日、神奈川県社会人選手権決勝トーナメント1回戦を辛くもPK戦で乗り切りました。
 1月27日の入れ替え戦で念願の神奈川県社会人リーグ1部に昇格したものの、喜びもつかの間、ケガなどで主力が次々に離脱、2月17日の試合の相手は1部の常連チームなのに、こちらはスタメンクラスが5人も欠場、ベンチメンバーが僅か1人という苦しい台所事情でした。
  ピッチに並んだのは公式戦初スタメンのメンバー、いつものボジションとは違うポジションで出場せざるを得なかったメンバー、手術後のケガの再発が懸念されるメンバー.....とても存分に力を発揮できるような状態ではありませんでしたが、その危機感がかえってよかったのでしょうか、終始劣勢の試合を粘り強く耐え続けました。
 時間内での得点数のみを競うのがサッカー。優勢か劣勢かの判定がないのが面白いところ。ここまでは、圧倒的に攻めながら決め切れずに、あるいは一瞬のスキをつかれて....とサッカーの「面白いところ」の「被害者」になることばかりだった我がチーム。この日ばかりは、その「面白いところ」を存分に活用させてもらいました。
 思い起こせば、入れ替え戦出場を賭けて戦った2部の決定戦、そして入れ替え戦、いずれも交代投入した選手が指示通りの動きをして見事に決勝点を奪ってくれました。そしてこの試合でも「こう戦え」と指示した通りの試合運びでPK勝ち。あれ、あれれ、あれれれれ......これって永井マジック?????
 はーい、だめだめ。勘違いしてはいけません。私はベンチの前に立っていただけ。プレーしたのは選手たち。彼らがきちんと流れを読んで「そこで何をすべきか」を察知し、適切なプレーをしてくれたのです。
 こうした彼らの成長を見ていると、いろいろな試合を体験していくということは大切だと改めて感じます。選手たちはこれまでの悔しい思いを着実にそ自分の栄養にしています。
 特に港北FCの選手たちは、中学、高校などで全国大会はもちろん、県レベルでさえ華々しい経験をしている者はほとんどいません。エリートが寄せ集まる他のチームとは異質の正真正銘の雑草集団です。だからその分、「今この時」に成長している部分が大きいのかもしれません。
 過去の栄光の上に「できあがった」選手を右から左に並べて勝つより、こうした成長の証を見る喜びの方がはるかに大きい.....。だから何十年も指導者辞められないんです(笑)。