国籍とは、国別対抗とは?

 猫ひろしさんがカンボジア国籍を取得し、五輪マラソン代表になることについて、さまざまな議論が渦巻いています。

 国籍まで変えて出場資格を取るとはいかがなものか、という意見もありますが、そんなことは世界では日常茶飯事。今、卓球の世界ランキング上位は皆、国籍の異なる元・中国人ばかり。母国では出場枠が限られているから、どんどん国籍を変えて別の国の代表になっている。
 カタールなんて、そもそも自国民がわずかなのに、海外からの流入者で国が回っている。サッカー代表チームも元~人ばかり。国内リーグなど、大金をはたいて「昔の名前ででています」という選手が山ほどいる。
 東欧の体制が崩壊した後、ステートアマだった選手、関係者が随分、身分の保障と引き替えに別の国の選手になった。それこそカタールの重量挙げ代表はほぼ全員、元ブルガリア代表でした。ドービングで有名になったベン・ジョンソンの国籍はカナダでしたが、彼が生まれたのはジャマイカ。そういう例をあげたらキリがない。
 日本だって人のこと言えませんよ。サッカーのラモス、ロぺス、サントスらには随分、お世話になっています。最近では李忠成選手もそう。バスケットボールでも、アイスホッケーでも、ソフトボールでも、もともと違う国籍をもっていた人に日本国籍を取得してもらって恩恵を得ている例はいくつもあります。そういうことを棚に上げて、猫さんを非難することはできません。
 ただ、より有利な条件、より安易な代表権獲得のために国籍を変更する、という潮流について議論していくことは必要でしょう。それは、「そもそも国とは何か」「国籍とは何か」「国の代表とは何か」という部分を考えさせるでしょうし、その先には「そもそも国別対抗という形式に意味があるのか」という議論が深まることもあるでしょう。