ウサギとカメ

 毎年、春になると、チームの新人獲得が取り沙汰されるようになります。我がチームにも、人の紹介、自らの売り込み等、いろいろな形で加入の照会があります。
 高校時代までにそれなりの成績で活躍したとする新人が体験参加に来るとなると、私たち一同の期待も膨らみます。しかし、期待通りに補強大成功、となることは希です。それは、彼らのほとんどが精神的にバーンアトしてしまっていて、我がチームのように本格的なチーム活動をしている環境に再び参入する意欲が萎えてしまっているからです。

 彼らは、社会人リーグのクラブチームということで、大学サークルのように軽い気持ちで遊び半分の活動ということを期待しているようです。しかし、チームの活動が、いわゆる「ガチ」ということを察すると、そういうのはもうたくさん....と尻込みするのです。
 もったいない話です。たかだか20歳前後、本来ならアスリートとして心身共に最も成長する時期なのに、すっかり心が疲れている。高校選手権だかインターハイだかしりませんが、そんなことへの参加で早くもエネルギーを使い果たしている。私にしてみれば、羨ましいほどの心身の可能性を持っていながら、隠居した老人のような心境になっている。
 我がチームのメンバーは、高校時代までに華々しい活躍をした経験はほとんどありません。無名の高校生か、あるいは多少、強いチームにいてもレギュラーになれなかった、という選手が多い。しかし、そういう雑草だからこそ、チームに加入してから成長します。最初は「どうなるのか???」と思うレベルでも、年間を通して真面目に練習していると、見違えるように成長する。
 まさにウサギとカメの寓話ですね。17~8歳で燃え尽きるのか、生涯スポーツとして常に年齢に応じた環境で最善の成長ができるのか。今年も心のフレッシュな雑草を待っています。