自分さえよければ....?

 プロ野球・巨人が契約金に関して12球団間の合意事項を無視し、有力選手に対して基準をはるかに超える莫大な額を支払っていることがわかりました。多分、野球界では「公然の秘密」だったのでしょうね。でも今回はそれが証拠の文書つきで堂々と報道されてしまいました。

 巨人側は、証拠とされる文書は球団として正式に発行した記録がないなどと言っているようです。よく子どもだましなどといいいますが、子どもでもだませない醜い「言い訳」ですね。
 スポーツは結果が予測できないからこそ、勝負を競う試合に耳目が集まるのです。最も避けるべき事は、戦力が一部のチームに片寄り、勝敗の奇数が読めてしまうことです。そのために、プロ野球界はさまざまな工夫をしてきました。ドラフト制度はその筆頭です。契約金の上限規定も同じで、カネを多くはたいた球団にばかり選手が偏らぬための取り決めです。
 そうした、球界全体の発展を考える取り決めに対して、常に棹さしてきたのが巨人です。大学、社会人の選手がドラフトに関係なく意中の球団と契約できる「逆指名」を強引に決めたのも巨人でした。そして、契約金の上限破りも巨人が先頭に立って実行してきたわけです。
 あくまでも「自分さえよければいい」という理屈。それはオリックス消滅騒動の際、「巨人、阪神ダイエー、西武などで1リーグにしてしまえばいい」と放言した渡邊恒雄氏の傲慢さに現れています。カネと人気がある者だけでやればいいでないか、お荷物球団の世話など焼く必要はない、要は親企業の宣伝なのだ、という姿勢です。
 ここには野球会全体を育てる意識、ファンと地域に思いを致す意識、スポーツを文化としてとらえる意識が完全に欠如しています。一番カネを持っている者が一番、大きな声を出して当然、文句があれば儲けてから言え、という極めて貧困なる精神です。
 その渡邊氏の貧困なる精神のために、当初、ホームタウンだった川崎を無視して巨人型の全国区チームを目指し、川崎市民から総スカンを食らったサッカーのヴェルディが、今、そのツケを解消するのにどれだけ苦労しているか。J2に落ちるまでの経営難になっている原因に何があるのか、ヨミウリの関係者はよく考えた方がいいですね。