バーンアウト

 お正月の各種スポーツ大会も一段落しました。若者たちが懸命にプレーする姿はさわやかでいいのですが、勝って涙、負けても涙、とにかく涙、涙、涙、というシーンのオンパレードには、いささか辟易します。「不謹慎だ!スポーツに賭ける純粋な若者の気持ちがわからないのか!!!」と全国から一斉にバッシングされそうですが、まぁ続きを読んで下さい。

 自分が好きなスポーツに一心不乱に打ち込んで一つの目標に邁進する気持ちは、私も経験者として十二分に理解できます。しかしそれにしても、長い人生の中のたった一つの区切りの大会に対して、あまりにも大きなエネルギーを注ぎすぎてはいないか、と思うのです。勝っても負けても、まるでこの世の終わりのような心理状態になって泣きじゃくる。一つの大会に対する勝ち負けの結果への入れ込みようが尋常ではない。
 「何を言う、そういう心理こそスポーツでは大切なのだ」という意見もあるでしょう。しかし、日本のトップアスリートの多くは皆、こうした極限の心理で勝ち負けの結果に大泣きする経験をして成人しているすばなのに、なぜか長じて後、オリンピックや世界選手権では勝負強くはないですよね。むしろ。必ず勝負どころでミスするような勝負弱さの方が目立つ。
 私は、トップアスリートたちが国際試合のここ一番、という場面で崩れやすく勝負弱いのは、17~18歳の全国大会の時点で心理的ピークを経験してしまっているからではないかと推測しています。その時点で精も根も尽き果てている。だから成人して、自己責任で自立して自分を律していこうとすると、どうしても楽な方、甘い方に流れていく。もう高校の時のように一心不乱に極限に追い込んでいくことなど出来るエネルギーが残っていない。
 高校時代に全国大会に出場するまでの経験をしていながら、大学進学の後はサークルのチームで「緩く」プレーする。という人がものすごく多くいます。「もうガチでサッカーするのはたくさんだ、と」。わずか19歳か20歳で、つまり最もアスリートとして伸びる時期に心理的に終わってしまっている。こういう人間を毎年、たくさんつくりだすような環境が、健全なものといえるのかどうか、考えてしまいます。
 本田圭祐も香川慎司も、一回の全国大会で燃え尽きるような真理ではなかったからこそ、今、世界を相手に堂々とプレーしているのではないでしょうか...。