天才少年の親と思っている人、これ良く読んで下さい

 先週末は、港北FCトップチームが0-2から3-2の逆転勝ちをしたり、その試合が終わってからスタジオ入りして担当したプレミアリーグ・マン-U vs アーセナルで何とマンUが8-2の圧勝をしたりと、ドラマティックな出来事が続きました。
 さて、先日NHKの記者さんに、10歳の日本人少年がバルセロナ入団をしたニュースについてコメントを求められました。その内容はNHKのWEB版ニュースに掲載されていますが、画面の都合で要約されているので、ここで補足しておきましょう。
特別に入団がが許可された少年は現時点では並々ならぬテクニックを発揮する天才少年に違いないことでしょう(見たことありませんが)。ただ、わずか10歳の子が、将来、バルサのトップチームを背負う逸材になるか否かなど、まったく五里霧中であることなど、世界中の幾多の逸材を厳選してきたバルサのスカウト陣が知らないわけはありません。天才少年が大人になったらタダの人、という例は世界中にありますから。ではなぜ、ここで敢えて日本人の少年なのでしょう。
 それはまず、青田買いで格安の「掘り出し物」を見つける場所だったアフリカに各国各チームの手が伸びてしまい、これまでほど「掘り出し物」が見つかりにくくなったという現実があります。その点、アジアはサッカーでは未開の大地。W杯では日本も韓国もまずまずの戦いを示しました。それなら、今度はアジアから掘り出し物を見つけるという流れの先鞭をつけてもいい、というわけです。
 アジアから話題の選手が加入すれば、出身国の放送局はバカ高い放映権を購入してテレビ放映してくれます。日本人なら、選手一人のために企業スポンサーもつきます。最近は落ち着きましたが、一時、日本人が実力に見合わずに海外移籍をしたのは、スポンサー契約と「込み」だったケースも少なくないのです。もちろん、チームのシャツ、グッズもぐんぐん売り上げを伸ばします。経営戦略としてアジア市場を開拓することは大命題なのです。

 もう一つ、世界中から超一流の逸材を集めることのできるバルサとなれば、ただ優秀な選手を集めるだけでは、話題にも何にもなりません。だって10億円(!!!)の移籍金でさえ、な~んにも話題にならないレベルですから。50億円くらいからでしょ、少し騒がれるのは。そんなレベルで話が進むチームですから、何か別格の「神話」が必要なのです。例えばマンチェスターユナイテッドがいまだに、飛行機事故で主力を失ったミュンヘンの悲劇(1958年)が「ユースから選手を育てる伝統の礎となった」という「神話」を持ち出すように。
 バルサのメッシには、幼い頃に難病にかかり体が大きくならない悲劇を背負いながら、世界一の選手になった、という神話があります。メッシが活躍するごとに、その神話は語られ、彼をスカウトする先見の明があったバルサ指導力の確かさが語られます。10歳の日本人....格好の神話作りの材料ではないですか。神話のメージも、スポンサー獲得には大きな要素なのです。

さて、このニュースを聞いて奮い立った自称・天才少年の親たちも少なくないでしょう。よし、我が子もいずれは...と。早速スペイン語を習わせたりして(笑)。そういう人は、かつて大盛況だったブラジルサッカー留学を思い出して下さい。カズ選手が大成功したということで、猫も杓子もブラジに行きましたよね。一時はブラジルのチームに2~300人の日本人少年が在籍しました。その結果、サッカー留学を斡旋するビジネスまで確立されました。
 で、その後、どうなりましたか? 誰かブラジルのプロとして成功し、日本代表に凱旋した人がいますか? カズ以外、誰も同じ道を通って成功した選手はいないのです。選手を断念して、結局、ポルトガル語の通訳として使われている、という人を何人も知っています。
 でも、通訳になれれば、まだいい方です。夢破れて、できるのはスペイン語だけ、では、なかなかその後の人生キツイですよ。よ~く考えて下さいよ、おとーさん。