ビラスボアスの苦悩

 気鋭の33歳、ビラス・ボアスに託されたチェルシー、緒戦、引き分けました。モウリーニョの再来を期待していたファンは不満だったかも知れませんが、難しい試合だったことは確かです。
まず、新監督は、就任と共に自分のイメージを以心伝心で表現してくれる「子飼い」の選手を何人か引き連れてくるものです。ビラス・ボアスとしては、自らの采配で躍進させたポルトで軸となっていたファルカオ、フッキなどがいてくれれば、言いたいことは阿吽の呼吸で伝わり、自分の色が出せたはず....。
 新監督が用いるもう一つの典型的な方法は、年俸とプライドが高く、一家言ある古参選手を放出して、経験が浅いがフレッシュで自分の色に染めやすい若手選手を大量に採用して、徹底して自らのサッカー哲学を叩き込み、新しいチームをつくっていくこと。しかし、今のところ、そのいずれもかなわず、前々からズラリと顔を揃えている牢名主のような億万長者軍団を指揮しなければなりませんでした。
 名だたるストライカー陣の中からビラス・ボアスが選択したのは(もしかしたら、オーナーのアブラモビッチの天の声によるかもしれませんが)フェルナンド・トーレス。ところが、チームは攻めあぐみ、いつまでたっても無得点。たまらずドログバアネルカを投入、某プロ野球チームのように4番バッターのそろい踏み状態。そしてポルト時代から採用していた4-3-3から4-4-2にシフトチェンジ。最後は攻撃のリズムにアクセントを加えるベナユンを投入、打てる手は打ったという感じですが、結局0-0。

 相手のストークは昨年、大躍進でFAカップ決勝に進み(0-1マンC)、組織的な守備力がとても充実しているチーム。巨人選手が多く揃い、とにかくタフなフットボールをしてきます。武器はデラップ選手のロングスローからゴール前の混戦で押し込むプレー。巧みさ、華麗さとは正反対のカラーなのですが(多分、日本のファンが最も嫌うタイプでしょう)、それに徹しているだけに、かかえって面白い。ある意味、お金を払って見る価値がある特異なスタイルです。
 そんなストークのホームに乗り込んで、前々から残された選手を使って見事な采配を見せてくれと言われても、なかなか難しいでしょう。でも、そこをやってのけるのがモウリーニョだったのかも。....と、何かにつけてモウリーニョが引き合いに出されことはさ避けて通れませんね。