レジェンドを大切に

 イングランドフットボールを見ていていつも感心するのは、往年の名選手、いわゆるレジェンドをとても大切にするということ。自分のクラブに貢献してくれた元選手をいつまでも忘れず、功労者として記憶しています。

 アーセナルvsマンUを実況した日も、スタジアムには元GKのボブ・ウイルソン氏と夫人が訪れ、ファンに挨拶していました(写真)。ご夫妻が運営する基金のアピールもかねてのことですが、ご高齢になったご夫妻に対して、ウイルソン氏のプレーなど絶対に見たことのない幼いファンも精一杯、敬意を表します。これはもちろん、その子に対して父親、あるいはおじいちゃんがウイルソン氏とその時代のアーセナルについての伝説を語り継いでいるからです。
 ウイルソン氏は、アーセナルが初来日した時(1968年)のレギュラーGKでした。日本代表と闘いましたが、1-3と日本代表が敗れた試合で日本が挙げた1点は釜本邦茂さんのダイビングヘッド。低いクロスに対してニアボストにダイビングし、ボールをファーサイドに流し込むというゴールで、当時「アーセナルゴール」と呼ばれたものです。
 釜本さんは68年メキシコ五輪の得点王。日本リーグ(当時)200得点など、ものすごい実績の持ち主。それでも、私たちの世代には神のように崇拝されているものの、あまりレジェンドとして大切にされていない気がします。例えば国立競技場のバックスタンドを、釜本さんの実績に敬意を表して「釜本スタンド」と名付けるくらいのことをしてもいいのではないでしょうか。
 エミレイツスタジアムのクラブグッズのショッブの前には、往年の名選手の名を刻んだベンチがいくつも置いてありました(写真はティエリ・アンリのものです)。
デニス・ベルカンプのベンチもありました。このように、いろいろな形でレジェンドはファンの心の中に生き続け、子に孫に語り継がれます。言い換えると、このように語り継がれる名士になろうと、選手も努力をするのです。
 サッカーのみならず、日本の各種目の「元名選手」もっと大切にしましょう。その種目の協会の会長や役員に据えておくだけでなく、大会や試合の時に紹介するなどして敬意を表しましょう。