武器を持つ人の強さ

 久しぶりにサッカーの話です。チャンビオンズリーグ準々決勝でマンチェスター・ユナイテッドvsチェルシーイングランド勢対決があり、2試合合計3-1でマンチェスターUが準決勝に駒を進めました。2試合とも素晴らしい内容でしたが、試合を決めたのはマンチェスターUのベテラン、ライアン・ギグスのプレーではないでしょうか。

 チェルシーのホーム・スタンフォードブリッでの第一戦、決勝点はルーニーのシュートでしたが、お膳立てはギグスのねらいすましたクロス。素晴らしかったのは、そのクロスを蹴る前のギグスのコントロールです。右から大きく振られたボールを、走るスピードをまったく落とさずにピタリと自分の前方に置きました。ボールを走りながら止めるだけでDFを抜き去り、クロスの準備もできているという一石二鳥の美技。それを受けたルーニーのシュートも見事なコントロールでした。
 本拠地オールドトラフォードに帰っての試合でも、やはり先制点の前のギグスのプレーが見事でした。今度は右サイドで左から大きく振られたボールをソフトなワンタッチでフォローした選手に落としました。そこから送られたクロスにエルナンデスがピタリと合ったのです。アジアの星パク・チソンが挙げたダメ押し点のアシストもギグス。落ち着いた配球でした。
 

チェルシーに一矢報いたのはドログバのシュート。後方から受けたボールをクイック動作でターンし、素速く叩いて決めました。フェルナンドトーレスにスタメンを奪われ、そのトーレスの不振で後半から出番を与えられてのプレーでした。さしたるチャンスも作れなかったトーレスに比べて、盛んにシュートを試みていたドログバの方がずっと戦力になると感じているのは私だけでしょうか。
 いずれにせよ、高度なレベルで均衡した試合の中で大きな仕事をするのは、何物にも代え難い「武器」を持っている人なのだなあと、また改めて思いました。日本には平均点の高い選手は山ほどいますが、なかなか「この人ならでは」という武器を持つ人は少ないですね。