アーセナルvsマンチェスター・U

 5月1日、アーセナルvsマンチェスターUの試合です。舞台はエミレイツスタジアム。6万人超の収容力を誇るスタジアム(日本で言えば埼玉スタジアムのレベル)を一つのクラブが専用保有しているのですからすごいですね。
前日、2位につけるチェルシーがスパーズを2-1と下したために、マンUはどうしても勝ってマンチェスターに帰りたい試合。しかし、3日後の水曜日にチャンピオンズリーグシャルケ04戦も控えているために、100%フルパワーを発揮できない難しさも。アーセナルは3位ながら残り試合と勝ち点差から逆転優勝はかなり難しい状況。しかし、ホームスタジアムでライバルが優勝の足固めをすることを許すつもりは毛頭ありません。
 アーセナルのプライドがマンUの独走にストップをかけるのかどうか、ということで、この試合は世界中の注目を集めました。ナマ放送でも紹介しましたが、私たちの右隣はブラジルの放送局、左隣はルーマニアの放送局が陣取っていました。中国からも上海、広東からそれぞれに大勢のスタッフが来ています。アブダビのアナウンサーからも話しかけられました。胸を大きく開けたシャツに口ひげのアナウンサー氏、なにやらコメディ映画の出演者のようでした(笑)。
 

セキュリティーチェックなど各エリアへの入場制限は厳重で、いたるところで専門のスタッフが仕事を分担しています。メディア対応、導線の管理、受け付け、案内など、総勢どれくらいの人がかわっているのかと思うほどの規模。日本で言えば、代表チームがW杯予選など重要な試合をする時のようなスケールでリーグの一試合が運営されています。動いている人の数を見ただけで、それらをまとめて運営するクラブの財政規模の大きさが想像されます。もちろん、試合前のオフィシャルショップの売れ行きは大変なもの。広い入り口があるのですが、バーゲンセールの時のように入り口側と出口側にわけて人の流れをコントロールしています。「こっちはダメ」と誘導するだけの職員も2人立ってました。

試合前ピッチレベルで「今日の見所」を収録する時も、各局が分単位でカメラ前の位置を割り当てられます。もちろんリハーサルなし。NG撮り直しはなし。一発本番です。放送ブースへの立ち入りも人数制限があって、実況、解説の他は技術さんが一人のみ。遠く離れた東京のスタジオで進行を采配するディレクターと直接やりとりしつつのナマ本番でしたが、有能なディレクターの的確な指示で進行はOK。
 試合はマンチェスターUが優勝を見据えての連戦を考えか、省エネモードの動き。エースのルーニーも最前線に立たず、パスの配給役に回った感じ。一方アーセナルはお得意のバスサッカーで圧倒します。しかし、パスは回るものの決定的な突破はなかなかできません。むしろ、じっくり構えてカウンターを繰り出すマンUの反撃の方が鋭い感じ。前半は攻めるアーセナル、受けて反撃するマンUの構図で0-0。

 後半、マンUファーガソン監督が動きます。想像するに、このまま0-0で終わるか、あるいはカウンターで1点を取って勝てるかと踏んだのでしょう。水曜のチャンピオンズリーグと翌週末のチェルシーとの直接対決のために主力クラスを温存しようと考え、交代を命じます。しかしそこに落とし穴がありました。交代で選手のポジションが動き、特にセントラルミッドフィールダー(中盤の深い位置、日本で言うボランチ)が交代して守備組織が整備され切っていないわずかな時間に、アーセナルの攻撃が火を噴いたのです。右から送られたボールにアーセナルのMFラムジーが走り込んで合わせ、ボールをマンUゴール左隅に突き刺しました。マンUの堅守に苦しんだアーセナルが、一瞬の組織の乱れを見逃しませんでした。試合はそのまま1-0で終了。

試合後、ベンゲル監督は「可能性がある限り諦めない」と強気の姿勢を見せましたが、一方で「チェルシーは直接対決に勝てば優勝のチャンスがあるが、現実にはマンUが有利だろう」と冷静な見解も。どこかの記者がベンゲル監督の来期の進退に関する質問を投げかけましたが、それはチーム広報によって即座に却下されました。まるでタレントの熱愛報道を引き出そうとする芸能記者を遮る事務所マネージャーのように(笑)。
 マンUファンは、優勝にストップをかけられて悔しい試合だったでしょうが、これで2位チェルシーとの勝ち点差は3となり、いよいよリーグの優勝争いが面白くなったという試合でした。もちろん、今週末のマンU vs チェルシーが引き分けで勝ち点が互いに1ずつしか上乗せできず、その一方でアーセナルが着実にストークから勝ち点3を取る、などということになると、またまた面白くなりますね。