いやなヤツですね

 このところ、少年とスポーツに関する講演にでかける仕事が立て込んでいます。私を指名してくださるのは、様々な組織、団体でスポーツ振興に尽力してくださる人です。スポーツの普及を考えていく過程で、少年スポーツのあり方はどの地域でも常に議論百出の問題になっているようです。
 もともと問題意識をお持ちの方たちに呼ばれていくわけですから、講演当日は、もう私が控え室に入った瞬間から、そうした方々とスポーツ談義に熱が入ってしまいます。私の方も、こんな熱い人たちがいるのだから、日本のスポーツの未来も捨てたものではないと、気持ちが前向きなります。
 しかし、どこへいっても、そうした私たちの熱い気持ちに水を差す人物がいます。役所関係の担当管理職です。挨拶をして一通り話は合わせてくれるのですが、まったく目が生き生きといておらず、熱意、大志のようなものが感じられません。「とりあえず、今、上の者のご指名によりスポーツ振興を担当しているだけです」というお仕着せの仕事感覚がありあり。まさに「お役所仕事」をする人とはこういう人、というイメージを絵に描いたような人々。
 先日も某自治体に呼ばれて講演をしましたが、そこで出会った「スポーツ振興担当部・部長」という肩書きの人も典型的なそのパターンでした。控え室で私と型どおりの挨拶がすむと、私たちと他のスタッフが熱く語り合っている話の輪にはまったく加わる意志を示さず。堅い顔をして「お付き合い」で座っているだけ。スポーツどころか、人として何を考えているのかまったく予想も付かない表情です。そして、「お付き合いの同席はここまで」と判断したのでしょうか、時計を見てさっと退席してしまいました。「すみません、私はここで失礼します」の挨拶も一言もなく。
 さて、講演の開始時刻が来て会場に通されると、その人は、演台の横の席にでんと座っています。そして、司会者の指名を受けて私より先に開会の挨拶をします。話の内容は、議会でスポーツ振興の議題に対してこういう受け答えをしました、この先も皆さんのスポーツ振興のために頑張ります、という手柄自慢と自己アピール。そして、いざ私の講演の始まり、となったとたん、そそくさと席を立って会場を横切り退場していきました。
 いやなヤツですね。私の大嫌いな人種。
 何がこれからも皆様のために...ですか。自分の行政区の人たちが、どういうことに問題意識を持ち、その結果、どのような講師の話を聞くことに至ったのか、そこで講師は実際にいかなる話題を投げかけるのか、それに対して聴衆はどんな反応を示すのか、そんな現場の実情を把握する意志をもたずして「これからも皆様のために...」などとよく言えたものだ。それ以前に、私と「お付き合い」の世間話すらも一言もせず、休日出勤したことの不快感がありありの態度で、講師の話が始まった途端に一番前の席から堂々と退席する態度は失礼千万でしょう。
 多分、その人は役人頭はいいんいでしょうね。仕事はそつなくこなし、組織の中で上手に泳ぐ術にもたけているのでしょう。だからこそ「部長」なる肩書きをもぎ取ったのでしょう。しかし、そういう人は「仏」の形は上手にそつなくつくれても、そこに「魂」を入れることはできないでしょうね。そんな人物にスポーツ行政を仕切られている人々は不幸ですね。でも、そういう人に税金から高~いお給料が支払われているることをお忘れなく。