イクメンの勇み足

 このところ何年か、小学1,2年生の指導を受け持っています。この年齢では親御さんの年も若く、皆、私の教え子の年代。時には私の息子・娘としてもおかしくない若い親御さんもいます。
 最近の若い親御さん、特にお父さんに目立つのは、とにかく自分の子どもにべったり、という人が増えたこと。イクメンなどという言葉が流行るくらいですから、お父さんが子育てに熱心なことは大歓迎。でも、かかわり方が少し濃密すぎるのでは、と思うこともしばしばあります。サッカークラブに子どもを預けたなら、活動の時間は基本的には私たちコーチにまかせ、また同時に、子ども同士の関わりを見守り育てる意識がほしいものです。
 しかし、サッカーの活動時間内でも何かと自分の子どもにべたべたと関わってこられる人が時々います。低学年ですからある程度はいいと思いますが、サッカークラブに来ても、まるで家庭の延長で「親・子」という関係を解き放とうとしないことがあります。せっかく子どもは子どもの世界をつくろうとしているのに、いつまでもそこに親が割り込んできてしまうのです。
 もちろん、自分の子ばかりでなく他の子も交えて「大人・子ども」という関係を広める関わり方ならそれはむしろ大歓迎です。しかし、大勢の子どもが周囲にいても、隔離されたように自分の子どもとしか遊ばないお父さんがいます。これでは親子二人で遊ぶ場所が家からグラウンドに移動しただけで、サッカーチームに入った意味がない。子ども自身も「親・子」という関係からなかなか抜け出せず、社会性が伸ばせません。
 練習試合をすると、試合と試合の合間に、自分の子どもだけ連れ出して個別行動を取る、などという場面は日常茶飯事になってしまいました。「皆でサッカーをしているのだからチームから勝手に離れてはダメですよ」と親が諫めることはとっくに昔話なのです。親みずからが進んで個別行動をとってしまうわけです。ハーフタイムにコーチが指示するより早く、自分の子どもにああだこうだと個人レッスンをする人もいます。私としては「大人と子ども、どちらを指導するのか」とため息が出ます。
 子どもに深く関わることは、無関心で放っておくよりもはるかに良いことです。ですから、そうした良き意志を正しい方向に向かわせたいものです。