礼!!!

 「礼!!!」というかけ声とともに、子供たちが深々と頭を下げる場面、少年スポーツでよく見ますね、我が子にスポーツをさせる意味の一つに「礼儀を身につけさせる」という親もいます。
 確かに子供たちはよく頭を下げます。まず入場する時に、グラウンドに礼。つぎに、本部役員に礼。試合が始まる時には対戦相手に礼、終わった時にも相手に礼。審判に礼。対戦相手のベンチにいって相手監督とコーチに礼。その後、自分たちの監督コーチに礼、応援してくれた父兄に礼、というチームも少なくありません。そして帰る時には再び本部役員に礼、最後にまたグラウンドに礼...合計10回も「お願いします」「ありがとうございました」と頭を下げます。試合数が増えれば、その都度対戦の前、後、審判、相手ベンチ、自陣べンチ、父兄に向けての礼6回分が加算されていきます。
 礼儀正しいことは悪いことではないので否定はしませんが、問題はその「礼の精神」が本当に身についているのかどうかです。
 サッカーで使わせてもらうから...という理由で「グラウンドに礼」をしている子供たちは、グラウンドだけでなく、自分が使わせてもらう施設の全てに同様に感謝の意を示しているでしょうか?毎朝、登校するときに「校舎に礼」をしているのでしょうか? 「お世話になる」という理由で本部役員に礼をしているなら、両親を初め自分に「お世話」をしてくれている人たちに毎日、心のこもった礼をしているでしょうか? 「試合をしてくれてありがとう」と礼をするなら、運動会の時、一緒に徒競走をしたクラスメイトに同じように礼をしているでしょうか?
 残念ながら、あのグラウンドでの礼儀正しさが日常生活でも同様に実践されている、というケースはほとんどありません。つまり、あのスポーツの礼は、その場限りの形式、儀式のようなもの、といわれても仕方がないでしょう。
 実際、指導する子どもには一日に何十回もペコペコと頭を下げさせているのに、その指導者本人が無愛想で高飛車で高圧的、というケースはそこかしこにあります。特にチームの成績がいいと、まるでそれが自分の手柄であるかのようにふんぞりかえっている指導者には、そうした傾向が強いようです。