マンU、お前もか!!

 先日、港北FCの中学生が地元の試合で思わぬ敗退をしたのと同じ日に、U-19日本代表も同じような負け方をしたことから、サッカーの試合の心理的な難しさについて書きました。何と、同じようなことはプレミアリーグでも起きました。
 16日、私が解説を担当したゲームはマンチェスター・ユナイテッド(マンU)vsウエストブロムウィッチアルビオン(WBA)。WBAは今季、昇格したばかりながら、アーセナルから大金星を挙げてリーク6位と大健闘しているクラブ。それでも、マンUの本拠地オールドトラッフォードに乗り込んでの試合では、さすがに結果は順当なものになるだろうという見通しでした。
 もちろん、もしや....という淡い期待もありましたが、開始早々、5分にマンUがFKのこぼれを押し込んで先制、続いて25分にもWBAのつまらぬミスにつけ込んで2-0とした時には、やはりな,,,という気持ちになりました。恐らくこの時、マンUの選手たちもスタッフも、この試合はこれで決まった、と思ったことでしょう。あとは無理をせず、力の劣る相手の隙を突いてカウンターで追加点が奪えればなおよし、という心理になっていたと思います。
 ところが後半、試合は思わぬ展開になっていきます。それまであまりチャンスが作れなかったWBAが、緩慢になったマンUの守備の甘さに乗じて大胆に攻め込みます。慌ててファウルするマンUのDF。そのFKからゴール前の混戦になり、WBAの得点が生まれます。
 それでも、まだ誰もマンUが勝つことは疑わなかったでしょう。事実、試合はマンUが主導権を握る展開が続きます。そして、いつマンUの追加点が入るか、という状況で、思い出したようにWBAのチャンスが生まれます。チャンスといっても、マンUの守備を見事に崩すものではなく、ようやく敵陣深くに進出したといったもの。
 そこでWBAの選手は、一か八かという感じでゴール前にボールをキックします。しかしその苦し紛れのキックは味方選手にまったく合わず、マンUのGKファンデルサールにキャッチされます。いや、キャッチされると思ったのですが.....事実、ファンデルサールはボールを手の中に入れたのですが....次の瞬間、ボールはポロリと手をすり抜けてビッチに転がってしまいました。WBAの選手がそれを拾ってゴールするのは簡単でした。2-2。
 セットプレーからの混戦、相手の苦し紛れのプレーに引き出されたGKのミス。信じられない展開で同点にされたマンUは、その後、乱れたリズムを取り戻すことなく、本拠地で格下相手から勝ち点3を取れず、勝ち点1で試合を終えることになりました。
 百戦錬磨のファーガソン監督とマンUの選手たち。相手はアーセナルを破って調子づいているから気を抜いてはいけないと、誰もが口にしていたことでしょう。それでも簡単に2点をリードすると、どうしても「もう大丈夫」という緩みが出てしまうのですね。一度緩んで思わぬ方向に動かされた気持ちは、なかなかもとに戻せません。
 人間の心理とは、本当にやっかいなものです。