イングランド対ドイツ

 イングランドは決勝トーナメントでアルゼンチンのブロックに入りましたが、アルゼンチンの前に一回戦でドイツと対戦することになってしまいました。イングランド対ドイツは因縁の対決です。

 1966年、イングランドが自国開催で初優勝した時の決勝戦の相手が西ドイツ(当時)でした。均衡した試合のリズムをイングランドに引き寄せたのはJ・ハーストの得点でした。それはゴール正面やや右から放たれたシュートで、クロスバーを直撃、真下に落下したボールはドイツDFにクリアされました。しかし、ラインズマン(当時)は落下した時にボールがゴールラインを割っていたと主審に申告、イングランドの得点が認められます。その得点を機にイングランドが攻勢になり、ハーストのハットトリックを含めて4-2でイングランドが勝利しました。

 4年後の70年メキシコ大会、準々決勝で両チームは再び相まみえます。この時はイングランドがA・ムレリー、M・ピータースの得点で2-0とリード、高地で炎天下の闘いだったため、イングランドはベテランの域に達していたB・チャールトンを交代で退かせて次戦に備えます。しかし、前回の66年大会の時と同様、中盤でB・チャールトンの後塵を拝していた西ドイツのF・ベッケンバウアーがそこから水を得た魚のように元気になり、自ら追撃の1点を返します。その後、西ドイツはU・ゼーラーのバックヘッドで同点に追いつき、試合は2-2で延長にもつれ込みます。そして、右ウイングのリブダが上げたクロスを左ウイングのレールがヘッドで折り返し、最後は爆撃機の異名を持つG・ミュラーがジャンプボレーでボールをゴールに突き刺し、西ドイツが大逆転を成し遂げました。

 それから20年後の90年イタリア大会。G・リネカーを要するイングランドは準決勝でR・マテウス率いるドイツと対戦します。この時は両者譲らず0-0のままPK戦になりますが、4-3でドイツが競り勝ち、そのままの勢いで優勝しています。66年の勝利以降、大事なところでドイツに競り負けているイングランド。奇しくも20年周期で巡り会う因縁。今回はその忌まわしい前例に終止符を打ってほしいものです。