準決勝

 ウルグァイは攻守の主力を欠きながら大健闘したと思います。総合力では明らかにオランダが上。しかし、わずかな隙を見つけては惜しみなく走って相手DFの背後をつく動きをしようと努力していました。終始攻勢をとったオランダでしたが、一時でも気を抜いたらカウンターの餌食になるという緊張はあったでしょう。

 36年前の対戦ではオランダのオフサイドトラップにことごとく引っかかったウルグァイでしたが、今回、フォルランが挙げた同点ゴールは、オランダの守備組織を混乱させて奪った見事なシュートでした。カウンターからタテに走り込んだ選手に対してオランダDFはラインを上げてオフサイドトラップを仕掛けます。しかしフォルランはその選手にバスをせず、右サイドにボールを振るような姿勢を見せます。オランダのDFがあわてて右(オランダから見て左)にスライドした瞬間、フォルランは右足で鋭く切り返してボール持ち替え、左足で弾丸ミドルシュートを決めました。36年の進化を見た気がしました。

 ブラジル戦の失点、ウルグァイ戦の失点。オランダはいずれも結果として勝っていますが、時として見せるエアポケットのような瞬間が気になります。いずれも早いテンポでゴールを狙われたプレーからの失点ですが、決勝の相手スペインは「一手間」多くかけてくるタイプですので、その心配はないでしょうか?

 さて、ドイツを振り切ったスペイン、見事なパスワークでした。初めて予想が外れました。ですが、終始圧倒した試合にも関わらず、得点はセットプレーからの1点のみというところが気になります。きちんと崩したプレーも相当数あったと思うのですが、結果として流れのプレーからは得点できなかった。このあたりがドイツ同様、組織的守備が強いオランダとの対戦で気にかかります。それでも、本来ならドイツに分があったはずのCKからのヘディングで試合を決めるあたり、スペインの攻撃の引き出しの多さはさすがです。

 ドイツは前半30分過ぎまでシュートも打てない状態でした。何度かカウンターからのチャンスをつくりましたが、苦しい体勢でのフィニッシュがほとんど。ここまで冴えていたワンタッチ、ツータッチのリズムでテンポよくDFの背後に走り込んでいくプレーが、スペインの攻守の切り替えの早さ、ボールに対するアプローチの早さの前に精度を落とされました。コンビネーションの効力が半減させられ、個人のテクニックで打開しなければならない回数が増えるほど、スペインの側に流れが傾いていきました。スペインのような上手い選手たちにハードワークされたら、かないませんね。

 3位決定戦は準決勝で意気消沈したドイツの若手の精神状態がポイントになるでしょう。ウルグァイは下馬評を覆しての健闘で、チーム、監督とも国民から最大級の評価を受けています。その流れで3位獲得に対するモチベーションはとても高い。出場停止のスアレスも帰ってくる。一方ドイツは優勝を逃したこと、劣勢でも必ず挽回するという自分たちが信じていた伝統の戦い方が崩れたこと、などから気持ちの切り替えが難しいのでは。純粋なチーム力ではドイツが上ですが、ウルグァイにも十分チャンスがあります。

 決勝は好対照のチームの対戦でとても興味深い。スペインがテクニックとパスワークを活かしたプレーで果たして勝ち切ることができるのか。オランダが戦術の徹底によって理詰めの勝利を手にするのか。また、勝たねばならない最後の試合で、お互いに「攻め」と「守り」のバランスをどのように駆使するのか。私はオランダ勝ちと見ています。