準々決勝

 ブラジルは自滅しましたね。前半を見る限りオランダに勝ち目なしと思いましたが。1-2と逆転されてからのフェリペ・メロの退場は大打撃でした。相手を悪意で踏みつける危険行為は文句なしのレッド。一人の自制心の弱さが、4年越しのチームの努力を全て台無しにしてしまいました。オランダは労せずして主導権を握ることになりました。

 思えば、やはり危険な行為で退場者を出し、その試合を失ってグルーブリーグ敗退したナイジェリア、シュクルテルが反則に執拗に抗議している間に彼の空けたスペースで得点され敗退したスロバア、選手も監督も自己主張ばかり通して空中分解したフランス、そしてブラジル。メンタルコントロールの稚拙さが命取りという例が目立ちますね。その点、日本代表は立派だったと思います。

 メンタルコントロールと言えばPK。入れれば勝って試合終了というPKを外してしまったガーナ、ジャンの心情はいかばかりだったか。しかし驚いたことに直後のPK戦で一番手のキッカーになったのがジャン。それを決めた彼の心の強さには、ただただ脱帽です。それでもPK戦の勝利はウルグァイへ。一世一代のバクチだったスアレスのハンドが結果としてガーナを振り落とした形になりました。立ち上がれないほど泣きじゃくっていたジャンのショックは想像を絶するものがあります。

 スペインを苦しめたバラグァイ、カルドソのPKも失敗。堅守が冴えていたバラグァイだけに、入れていれば世紀の番狂わせもあったはずです。その直後のスペインのPKもシャビ・アロンソが失敗。一度やり直しがあったために、蹴るコースの駆け引きで気弱になってしまったのでしょうか。スペインの決勝点がポストに二度、続けて当たった末に生まれたことも印象的でした。健闘パラグァイのハードラック。泣き崩れていたカルドソは、なぜ、幸運の女神が自分に微笑んでくれなかったのか問い続けることでしょう。

 アルゼンチンを撃破したドイツ、見事でした。オシムさんが「アルゼンチンは、サッカーは11人でやるものだということを思い知っただろう」と語っていましたが、的を射た指摘だと思います。確かにアルゼンチンアタッカーの個人能力は素晴らしい。しかし、一人ひとりがボールを持つ時間があまりに長すぎて、ドイツ守備陣が組織を固める時間を十分に与えてしまいました。組織で待ちかまえている守備を技術と閃きだけで崩し切ることは難しい。

 さて、確信犯ハンドで退場したスアレスを出場停止で欠くウルグァイは、厳しい準決勝になります。しかし、オランダに支配される展開でカウンターを狙うという、得意中の得意とする戦法がはまりやすいことも事実。ブラジル戦のオランダの失点は、戦術、約束事に気を捕らわれているうちに、相手の大胆な侵入に対処が遅れたもの。時として理屈が先行しがちなことがオランダサッカーの弱点。その点、ウルグァイにはしたたかに現実を見る目があります。フォルラン絡みでオランダを慌てさせる力は残っていると思います。それでも最後はオランダが振り切るか。

 スペインはアルゼンチンよりは個々の選手がボールをさばくタイミングが早い。その意味ではドイツはアルゼンチン戦よりも苦戦すると思います。ただ、アルゼンチンよりテンポよくさばくといっても、崩しに一手間かけすぎ、という印象は残ります。その「一手間」がドイツの粘りを許す要因になるのではないかと思います。手数をかけて攻めあぐむスペインに対し、粘り強い守備から鋭いカウンターを繰り出すドイツ、という展開になるでしょう。勝負はセットプレー絡みか。

 決勝戦はオランダvsドイツと予想しています。