イングランド戦

 30日のイングランド戦(1-2で敗戦)で喫した日本代表の2失点は、いずれもサイドからのクロスをオウンゴールしたものでした。その二つとも、日本のDFが戻り切る前のタイミング、つまり、自陣ゴールに向かって走っている状態の時に、非常にスピードのあるボールがDFとGKの間のスペースに向けて蹴られたものでした。得点にはなりませんでしたが、やはり右から(日本から見て左から)送られたクロスにルーニーヘスキーの2人が飛び込み、ヘスキーのヘッドで捉えられたボールがわずかにゴールをそれたシーンもありました。

以前、このコラムで「何のためのクロス」という主旨で、日本選手のクロスに対する意識の低さを採り上げました。日本の場合、サイドに開いてボールを受けた時点で目的達成と感じているのではないか、問題はそこから先どのようなクロスを蹴るかである、ということを書きました。日本のオウンゴールを引き出したイングランドのクロスは、まさに、いつ、どこに蹴るか、というポイントを押さえたものでした。ニュースで繰り返し放映されていますが、日本と対戦するオランダがメキシコとの親善試合で上げた2得点も、早いタイミングでDFとGKの間に蹴られたクロスにファン・ペルシーが合わせたものでした。

サイドからのクロスという場面では、複数の選手がゴール前に飛び込みます。この時、イングランドのように、味方選手が触れば得点になるし、味方が触れなくても相手DFがオウンゴールしかねないようなクロスを送っておけば、得点の可能性が高まると共に、カットされて逆襲されるリスクも軽減されます。もしここで、DFが簡単にクリアあるいはカットできるようなクロスを蹴ってしまうと、攻撃側はクロスに合わせるためにゴール前に人数を集めていますから、簡単にカウンターを許してしまうことになります。

実は同じ日、私の指導するチームがまさにこのクロスの失敗からカウンターを受ける形で失点を重ね、敗戦しました。絶好のチャンスと思われた次の瞬間、得点機を逃しただけでなく逆に失点してしまうのですから落胆の大きさは二倍になります。たった一つのキックに込める意識が、試合を左右することになりかねないという事実を選手は体感したことでしょう。

さて、イングランド代表ですが、日本戦の動きは私の評価では100点満点で30点くらい。普段、プレミアリーグで見る動きとはまった違い、まるで別人のように鈍いプレーでした。軽く汗をかく程度の意識だったのかもしれません。PKを川島にストップされたランパードですが、多分、プレミアリーグが日本でも放送されていることを知らなかったのでは?。リーグ優勝のかかった大一番でチェルシーがPKを獲得したとき、得点王を争っていたドログバを制して「ここはオレが蹴る」と左隅に決めたシーンは印象的でした。川島は多分、それを覚えていたのでしょう。

日本からオウンゴールの2点しか奪えなかったことで、イングランド代表は国内で酷評されることでしょう。また、前半テストされた代表メンバー当落線上のベント、ハドルストーン、レノンあたりは南アフリカには行けないかもしれません。