クロスと決定力

 バラグァイ、グァテマラとの二連戦は、監督の明確なコンセブトが確立されていない状態だっただけに、代表クラスの選手たちの「素の姿」が見えた気がしました。強く縛らずに自由に、しかしチームとしての連携も考えつつプレーさせた場合、日本のトップレベルの選手たちはあのようなプレーをする、ということが示されたと思います。
 パラグァイ戦では香川の鋭い動きが目を引きました。積極的にDFの間、あるいは裏のスペースに出ようとする意識は、高く評価できます。しかし、グァテマラ戦では、その動きもすっかり影を潜めてしまいました。パスの出し手との関係もあるでしょうが、香川には、アタッキングサードでボールを受けた時に何かを期待させるようなプレーを、コンスタントに発揮してほしいものです。
 二戦を通じて感じたことは、クロスに対する対応の貧しさです。グァテマラ戦では長友のクロスが得点に直結しましたが、それ以外では、二戦とも相当、決定的なクロスの場面であっても、あっさりと失敗している場面が気になりました。それはクロスのキッカーの問題もありますが、中央でクロスを受ける選手の問題もあると思います。
 クロスに合わせる最もオーソドックスなポイントに、最前線のストライカー(森本や岡崎)が飛び込むことは大前提です。同時に、そのポイント以外にボールが流れてくる可能性のあるポイントに、二番手、三番手の選手が入ってこなければなりません。それは、クロスのキッカーの姿勢や蹴るタイミング、相手DFの戻るコースなどによって微妙に違ってきます。
 そんな第二、第三のシュートポイントに感づいてほしいのですが、どうもうまく感じられていないようです。とても図式的に、機械的にゴール前に進出しているように見えてなれません。だからでしょうか、 クロクスが森本や岡崎に合わずにボールが流れたとき、そこには誰もいないか、いたとしても予期せぬボールが来たとばかりに慌てて対処にとまどう、といったシーンがよくあります。
 グァテマラ戦は、圧倒的気に試合を支配しながらスコアは2-1でした。もちろん、ザッケローニ監督に多くの選手を見せるために、交代を頻繁に行い、即興的な組み合わせになった選手たちが息を合わせづらかった、ということもあるでしょう。それでも、クロスが入る、という場面になった時の動きは、監督のコンセプトやチームの約束事を超えた、普遍的な感覚ではないかと思います。
 カウンターから鋭く決め切るプレーを伝統とするイタリアのサッカーを知るザッケローニ監督には、このあたり、厳しく指導してしてほしいものです。