炙り出された日本サッカー界の問題

 5月24日の韓国戦は、まったくいいところなく0-2の敗戦でした。まずは先制点を奪ったパク・チソン選手の突破力には脱帽です。激しくタフなプレーが日常であるプレミアリーグで活躍しているからでしょう、彼にとっては日本選手のタックルやチャージなど眼中にないといった感じでした。ゴールへの最短距離を一直線に突き進み、迷うことなく素速いフォームでシュートを打ち抜いた姿を見て「まさに今、日本がもっともほしいタイプの選手」と思いました。

1点を奪った後の韓国は余裕の試合運びでした。日韓戦というと常にトゲトゲしい雰囲気で、選手も必要以上にエキサイトするという歴史を少年時代から見てきた私ですが、今回の韓国からは、そんなつまらないことに神経を使う必要はないという余裕さえ感じました。大人が子どもをあしらっているかのような、一段高みに立ったような泰然とした姿勢を感じました。実際、ゲーム内容にはそれほどの開きがあったと思います。

岡田監督は「サイドバックから一度、中盤なり前線なりにボールを預けて、攻撃の起点作りをしようとするプレーが、韓国のプレッシングの厳しさでできなかった」と語っていました。確かに、攻撃の起点として大きな期待を担った本田選手は満足にボールを扱うことさえできず、岡崎選手はボールを触れた回数そのものがわずかでした。大久保選手に至っては、ボールに触れれば次はほとんどミスという状態でした。

私は常々、日本人のMF志向と技術偏重のプレーには問題があると指摘しています。少年からプロまで、日本人が「上手い」と評する選手のほとんどがMF なのですが、その彼らの技術は、プレスの甘い中盤で安全なプレーをする時には有効ですが、ゴールに近づいてプレッシャーがきつくなると、とたんに威力を失うのです。だから皆一様にフィニッシュに向かう直前に誰かにパスして責任逃れをするのだと。そんな日本的傾向の集約された姿が今の日本代表でしょう。期待された本田選手ですが、立ち止まってボールをさばく分にはそれなりのプレーをしていたかもしれませんが、一度ボールに絡んだ後、DFを振り切ってウラのスペースに突進するスピードはまったくありません。その点、パク・チソン選手との差は歴然です。

前半20分、有効な守備からカウンターをしかけ、左サイドから大久保選手がドリブルでち込みシュートした場面がありました。日本の最初のビッグチャンスです。しかしシュートは右に外れました。特にDFに競りかけられたわけでもなく、GKが飛び込んできたわけでなく、フリーといったら言い過ぎかもしれませんが、インターナショナルマッチのゴール前としては相当の余裕があるシュートシーンでした。しかしここで決められない。枠に飛ばすこともできない。あれが日本のアタッカーの現実です。幼い頃から、運動能力に任せてゴールに向かって思い切り蹴っておけばゴールインしていた、そんなことの積み重ねが、長じた後、国際試合であのような失態につながるのです。

ロスタイム、韓国はカウンターから日本の反則を誘いPKで追加点を挙げます。韓国はこの場面の前にも何度か、一気呵成にカウンターをしかけてきて、波状攻撃を加えてきました。「ここだ」と判断したときの韓国選手の決断力の強さ、勘所を察知する判断の的確さには感心します。「勝負」の分かれ目というものをよく心得ているなと思います。方や日本では、バランスを崩すな、とか、ゲームの終わらせ方、だとか、先々を読むこと、事前に準備をすることばかりに気を配ることに熱心で、ここぞという場面にリスクを覚悟でプレーする力が養われていない気がします。

岡田監督は、二度続けて韓国に敗退した選任を感じ、サッカー協会会長に「私が続けていいのですか」と進退伺いをしたと、直後の会見で打ち明けました。しかし、誰が監督をしても選手が変わらねば同じことでしょう。日本サッカーが抱えている問題は、代表チームの戦術やチームマネジメントで改善されるほど簡単な問題ではないと思います。