コートジボアール戦

 6月4日のコードジボアール戦は0-2の完敗でした。各メディアはフィジカルの差を強調しました。もちろん、体格、体力(特に筋力)の差は随分あったと思います。ボールを巡る競り合いで、日本選手は苦労しました。しかし、敗戦の原因はそれだけではありません。

 本当に日本は完全に手も足もでない状態だったでしょうか。勝ち目は100%なかったでしょうか。例えば前半、本田選手が得意の左足でシュートを打ちましたがボールはゴールを外れました。後半、森本選手がヘッドでボールをゴール正面に落としましたが、誰もそこに飛び込まず、相手DFは難なくクリアしました。更に中村憲剛選手からペナルティエリアに走り込んだ中村俊輔選手に絶好のパスが出ましたが、中村俊輔選手は珍しくトラップミスし、シュートに至りませんでした。この三つのチャンスの一つでも確実に得点に結びつけていれば、状況は違ったでしょう。しかし日本はそれができなかった。フィジカルうんぬんではなく、こちらの方が重大な問題なのです。

 本田選手は左足の破壊力が自慢だったのではないでしょうか。森本選手がボールに反応しようとしているとき、次にボールがどのあたりヘッドで落ちそうかは、中学生でもわかったでしょう。しかし誰もそこへ行かなかった。チャンスがわずかしかない強敵と闘ってリードされているなら、千載一遇のチャンスと感じて、死にものぐるいで行かねばならない場面だったはずです。中村俊輔選手にも、あのトラップは、それこそ命を賭けてシュートに結びつけてほしかった。

 たった三回しかチャンスがなった、ではなく、三回チャンスがあれば確実に1点取れる、うまくいけば2点取ることも可能、という勝負強さが必要なのです。それがあれば、劣勢の試合などまったく怖くない。サッカーは形勢も印象も採点も途中経過も関係ない、90分の試合が終了した時点で勝っていればいいスポーツです。ポゼッションを高めることが目的ではなく、点を取ることが目的なのです。チャンスをきちんと活かすことが大切なのです。

 このあたり、ファンの評論も、メディアの論説も、何か筋違いな部分ばかり議論しているように思えてなりません。戦術理解が進んでも、ポゼッションが高まっても、選手や監督を代えても、結局チャンスをチャンスと感じ、そこに集中して力を注げる力がなければ同じ事なのです。それは岡田監督の手腕うんぬんではなく、日本のサッカー界全体の問題でしょう。