セントラルMFと日本のボランチ

 イングランドカーリングカップ決勝はマンチェスターUが2-1でアストンビラを下し優勝しました。アストンビラも健闘しましたが、やはりウエイン・ルーニーという絶対的なストライカーの有無が勝敗を分ける最も大きな要素だったと思います。
 もう一つ、感じたのは、マンチェスターUの2人のセントラルMFフレッチャーとカリックの攻撃力です。二人とも守備の堅さから評価を受けて成長した選手ですが、中盤の深い位置を基本ポジションにしながら、機を見て果敢に攻撃に加わり、ルーニーベルバトフの両FWと連携します。イングランドでは、自陣ゴール前から敵陣ゴール前までの広い範囲をカバーする選手を、敵・味方のペナルティポックスを行き来するという意味で「ボックス・トゥ・ボックス・プレイヤー」と称賛しますが、まさにこの二人の動きはボックス・トゥ・ボックスでした。
 この二人に限らず、プレミアには素晴らしいボックス・トゥ・ボックス・プレイヤーが数多く存在します。その筆頭はフランク・ランパード(チェルシー)とステーブン・ジェラード(リバプール)、セスク・ファプレガス(アーセナル)でしょう。彼らは、ただ単に運動量が多いだけではなく、時には自らも突破をしかけ、シュートを放ち、勝負を分ける場面に極めて能動的に関わりを持ちます。
 日本のサッカーでは、ほぼ同じ位置の役割を「ボランチ」と称し、特に育成年代では、そこに最も能力の高い選手を配する傾向があります。しかし、そのボランチ君たちのプレーの多くは「パスのさばき屋さん」であることが多く、バスはつながっているのだけれど、かといって攻撃の構築には大した意味を持たない、と感じるプレーが多いように感じます。日本で「ボランチ」と称される選手がペナルティボックスの中にぐいぐい突破を仕掛けるなどというプレーは、めったにお目にかかれません。
 私が指導しているチームに入部を申し出てくる若い選手の多くも「ポジションはどこ?」と聞くと「ボランチです」と応える割合が非常に高い。ボランチでなくても、「MFです」と応える割合は80%以上です。ああ、一億総ミッドフィールダー----。そんなサッカー環境なのだから、その頂点に君臨する日本代表チームが責任逃れのバスばかり回して突破できないのもしかたがないでしょう。