バーレーン戦と都知事

 消化試合。本来、ただスケジュールをこなすだけに意味のある試合。そんな試合に、これほど「本気」で取り組まねばならないほど、日本代表は窮地に追い込まれていたようです。いわゆる「海外組」を呼び寄せてベストメンバーを並べた布陣。対するバーレーンは、過去ずっと日本の寝首をかくことに執念を燃やし続けたチームで、実際、何度も手を焼かされ続けてきた相手ですが、今回ばかりはまったくその怖さが感じられない飛車角落ちの状態。互いのモチベーションがあまりに違う中で、日本代表の選手は、とにかく「世論」を納得させるためだけに全力を尽くしていたように思えました。
 勝利という結果が大切なのか、それとも試合内容や勝利を目指すためのプロセスが大切なのか。もちろん、その両方があれば理想でしょう。某都知事バンクーバー五輪へのコメントを求められて「銅メダルで驚喜する、そんなバカに国はないよ」とのたまわれたとか。まあ、第三国人発言をし、銀座に戦車を走らせて悦に入っているお方ですから、「敵」と認識した相手をたたきつぶすことが大好きなのでしょう。そんなご本人も確かサッカー経験者だったとか。どこかのチームの始球式でおぼつかないフォームでボールを蹴っていたことを思い出します。そんな強面の御大が経験者としてバーレーン戦を見てどうお感じになったものか、気になります。「やる気のない相手にたった2点で驚喜するバカな国はないよ」と言ってますかね。
 もちろん、代表チームには頑張っていただきたいし、懸命にプレーしている選手たちには、よいバフォーマンスを見せてほしいと願います。また、それが観戦している少年たちに良い刺激を与えてほしいと思います。同時に、私たちの中に目前の勝敗だけでなく、そこに含まれさまざまな「意味」を感じ取れる「視点」が育つことも必要です。今回の日本代表の勝利をどうとらえるか、サッカーファンの認識の深さが試されるかもしれません。
 オリンピックを見て銅メダルが「立派だ」と称賛した人たちは、その結果が示される過程にどのような困難があり、選手がいかに難しい闘いをくぐり抜けたか、という意味を感じていることと信じています。それに引き替え「なんだ3位じゃないか」と言わんばかりの貧弱な視点は、「一番じゃなきゃイヤだ」とダダをこねる幼児のようでこっけいです。