それぞれのレベルの低さ

 ジャニーズ事務所問題。

 おぞましい行為をデビューと登用の引き換え条件にしていた創業者と、その少年虐待の果てに業績が上がることを黙認していた事務所と、視聴率を稼ぐためにその悪魔の所業を見て見ぬ振りしていたTV局と、海外メディアが指摘したことに便乗しているだけなのに社会正義の代表のような顔をして居丈高になるジャーナリストたち…。

 私に言わせれば、関わるっている人たち皆、揃いも揃って五十歩百歩。美味しい話で「実利」を取るためなら、なりふり構わず恥知らずのことをする、という浅ましい精神の人たち。「人はパンのみにて生きるにあらず」と古代の賢人は言いましたが、あからさまに「パンのためなら平気で何でもします」ということでしょう。

 目前の「欲」を前後脈絡なく満たすためだけなら動物と同じです。そうではなく、真理を探究し、倫理を尊び、恥ずべきことを知るのが、高度な知能を持った人間ならではの姿であるはずです。でも実際は、目前に利と得がちらつけば平気で真理に蓋をし、倫理に反し、恥知らずな行為をして平然としている人がいるのです。

 考えてみれば、「国民の皆様のため」と嘘八百を並べて私利私欲を満たしている政治家を筆頭に、善人、常識人を装って実は「ひとでなし」のことを平気でしている輩はいたるところにいます。教え子の猥褻画像を撮っていた校長(!!!!!!!)や有名進学塾講師が逮捕されましたが、彼らは一応(笑)「教育者」ですからね。

 さて、これを機会に、局側のタレント事務所への「忖度」から、どの番組にも素人みたいな男の子の出演枠が確保されていて、およそプロとは言い難い学芸会の延長みたいなものを見せられるのは、もう終わりにしていただきたい。

 被害者の証言によれば、スカウトされてろくにレッスンもせずに「YOU 出ちゃいなよ」といきなり出番があるようなことも珍しくなかったとか。言い換えると、そんな素人芸を見せられても何とも思わなかった視聴者のレベルも、おぞましき暴挙を何十年も続けさせた原因の一つかもしれません。

 タレント事務所もTV局も「成熟した高度な才能を世に出す」という矜持を持ち、メディア関係者は「才能」や「芸」に対して厳しい目で技量を批評し育てる。そして見る側も、目をこやして未熟な少年ではなく厳選された「本物」の才能を堪能する。そんなエンタメ業界であってほしいものです。