自己責任

 シリアで拘束されていた安田純平さんが救出されたことで「自己責任論」が取り沙汰されているようです。この手の事件が起きると必ず持ち上がる話です。
 自分で好き勝手に危険地域に入って行って過激派に拘束されたのだから、政府の世話になって国費で救出されるのはいかがなものか、ということです。
 そのように声高に糾弾にしている人は、自分が病気になった場合、医療費のうち健康保険でまかなわれる分の援助は辞退して、全額自費で支払うんですよね。だって病気は自分の健康管理が悪いこと、つまり自己責任の結果なのに、他人のお金も含めて運用されている保険を使うのはおかしいですよね。
 また、そういう人は交通事故にあった場合、前方不注意とか速度超過とか、少しでも自分に落ち度があった場合は当然、救急車なんか呼べませんよね、自己責任なんだから公費で運行している救急車の助けなどは受けられないはずです。
 さらには、そういう人は災害が起きても、広域避難場所とか、体育館には行かないんでしょうね。だって災害の多い日本なのだから、普段からちゃんと備えをしていない方がいけないのだから。その自己責任を置き去りにして「公」の施設に甘えるなんておかしいということになりますよね。
 もしかしてアベ政権が戦争を始めたとしたら、そういう人は自分で武装して戦うんでしょうね。日米安保条約が結ばれていることを承知で日本に住むことも自己責任ですから。あの人格者ばかりが集まる立派なセイフ(笑)に「守ってよ」というのは虫が良すぎますよね。
 自分がやることは全部自分で始末をつけろ、公金や公的機関には自己都合で甘えるな、という人は、きっと国道、県道、市道を歩いたりする時も、自分が税金を払っている分だけキッチリと使わせて貰うんでしょうね。だって自分が支払っている税金は微々たる額なのに、使う時はちゃっかり全部自由に使うなんて、自己責任論者としたら恥ずかしくてできないでしょう。
 いずれにせよ、一度たりとも自己都合で公金や公的制度のお世話になったことのない人だけが、他者に向かって自己責任論を堂々と降りがかざすことができるはずです。